不利と狼煙 6/30
「まずは、この発達都市という地形。上からの狙撃はかなり有利になる。鳳さんは出来るだけ高いビルの屋上を占拠してくれ。俺は登りきるまで入り口をガードする」
「オーケー」
彼女は了承の一言だけ残して、走り去っていった。
マソウ・ジェネラル・レギュレーション。この学園での決闘で、最も無難な戦闘方式だが、かなり複雑なルール。制限時間は30分。
数の優劣に関わらず、ポイント制で勝負を決める形式。たとえスタートで人数的に出遅れたとしても、ポイントで上回れば勝利。
敵の撃破50
この勝負は生き残った数が0でも、相手より点数を多く稼げば勝ち。一方のチームの全員が敗れた時点で決闘は終了となる。
こうは言っているものの、数の優劣はやはり重大なものとなる。数が少ないと、敵からの攻撃が受けやすくなり、尚且つ制圧スポットは数が多いほど到達しやすくなるのは、想像するのには、易いだろう。
取り敢えず、制圧点は捨てる。むしろ制圧点を取りに行く敵を狙えば良い。こちらには、高度の射撃技術を誇る鳳がいる。
あとは音魔法を如何に使うか。それと氷牙のスキル。それらが鍵になってくる。
『屋上を占拠したよー』
「わかった。一度周りを見渡して、敵がいないか確認してくれ」
『……うーん。見たところ居ない。きっと建物の中か、こちら側から見えない建物の裏だと思う』
このフィールドに
鳳のいる屋上から見たら、敵が何処にいるか一目瞭然。建物の中、つまり敵は俺達と戦う気は無いと見て良いのだろう。敵の武器は全て剣のため、遠距離の危険性は無い。着実に、制圧をして勝ち逃げする気なのだろう。
「鳳さん、制圧スポットが現れたら、そこを重点的に見張ってくれ」
『オーケー』
しかし、そうは飲み込んだものの、妙に引っかかる。何故、人数で有利なのに攻めてこない。制圧点に向かえば、ライフルによる狙撃の餌食になるだけだとわかっているだろうに。なのに、建物に息を潜めている。少なくとも鳳が遠距離型だと知っているはず。なら、俺を攻撃してくるのが、妥当ではないのか。
「
小さな話し声でも聴こえるようにする『増音』。増音のデメリットは、音を大きくする一方で、敵の位置を掴みにくくなる。音の波長を大きくしているので、その振れ幅の分だけ、敵の存在可能性範囲が倍以上に膨れ上がる。メリットは、敵の会話を傍聴出来る上に、こちらの声には影響が出ない。
『よし、それで大空を叩くぞ』
『『おう!』』
しまった。少し使うタイミングが遅れた。しかし、一つわかるのが、敵が三人共攻めてきているという事。制圧点は狙いに行ってない。だが、断片的な会話過ぎる。情報が少ない。
「鳳さん。今の聞いていたか?どうやら、三人共が俺を狙っているらしい。援護を頼めないかな」
『勿論』
さて、鳳の援護を貰えるが、自分でもしなければならない事がある。少なくとも、真霧との戦いで使ったあの作戦をもう一度使うと、色んな人があの技を今後危険視するようになって、使える機会が少なくなるから却下。それに、今だとあの戦いから二週間も経っていない。覚えている可能性も考慮すると、失敗する可能性が大半。
そうなると、別の音の使い方をするべきだ。
斎藤剣真以外なら、太刀打ちはまだ出来る。斎藤ともう一人の足止めさえ出来れば、勝ち点は取れる、はず。
しかし、どんな風に攻めてくる?
バラバラに一人ずつが一番やりやすい。
一番厄介なのが、斎藤のみが一人で他の二人は
最後に考えられるのは、
……音魔法の使い道はこれしかない。
このビルから半径50メートル以内の足場全てに、音爆弾。ダメージはないが、敵の距離と大体の位置がわかる。
この音が鳴り響けば、本物の戦いの
ーーザザッーー
来た。
「ドゴォォォォオン!!!」
地鳴りがする方向は、右前の小さなビルの背後か。さぁ、始めよう。
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