決闘と規定 6/30

「結局、今日という今日まで、ほとんど何にもしなかったな……」


「なぁに、チームの仲が全てを決める、と思えばいいさ。何も気を落とす必要はない。

 さぁ、行こうぜ。新生『ブレイヴ・ハーツ』始動だ!張り切っていこうぜ!」


「「「おう!」」」


 冷姫の場をまとめる一声に、チームメイト全員が呼応する。そして、それぞれの持ち場に着く。


位置についてセット


 そう言うのは、今回の審判の坂上だ。二年で、あまり有名じゃない人らしい。握手をした時に、名札で見て名前を覚えた程度だ。彼の言う通りに、『BCP』の中に入る。


電脳空間潜行開始ダイブスタート


 全員の準備が整ったようだ。その坂上の合図と共に、俺は生徒番号をゆっくり、正しく打ち込む。そして、バーチャル空間に入る。


 既に準備が出来ていたのは、鳳一人。俺の打ち込むスピードを考慮すると、冷姫が居ないのは、おかしい。


「あれ、冷姫は?」


「チームメイト一人が入ってから、一分まで入れるから、大丈夫よ」


 まだ後45秒ある。それぐらいなら、大丈夫か。

 ピガッという機械音が耳から聴こえる。これは、脳に直接特殊な電波を送り、通信として送っていて、現実世界にいるサポートメンバー(普通は整備士)と通信を取る時の合図だ。つまり、うちの整備士榊原からの連絡。連絡は決闘が完全に始まるまでは、何秒間でも使える。


『二人とも、よく聞いてくれ。冷姫は機械トラブルによって、そっちに行けないみたいだ』


「そういう場合なら、決闘を延期出来るでしょ?」


 鳳が最もな投げかけをする。すると、諦めてサポートメンバーに入った冷姫から反応が起こる。


『ダメだ。六月は全部で何日だ』


 俺はハッとする。今日は6月30日。


「つまり、今延期をしたら、俺の退学が決定する……?」


『その通りだ。……生憎だが、二人で勝つしか、このチームの未来はない』


 冷姫の声が暗くなる。


『で、でも、取り敢えず、決闘規定第八条にある、『機械への何かの損傷、被害が発生した場合、決闘を延期または損傷が起こった人物の着用スキルの委託が可能』というルールに則して、大空に冷姫のものを全部アタッチメントしておいた。鳳さんには攻撃力アップとか無意味だからね』


 榊原の気の利いた言葉は、確かに朗報なのだが、人数の不利、俺のレベルは冷姫より大幅に劣るというハンデを負ったのだ。

 90%あった勝つ可能性は、10%あるかないか、といったところだ。


『……ブレイヴ・ハーツ!それが俺達のチーム名だ!勇敢な心を捨てなければ、きっと勝機はある。諦めるな、行って来い!戦士達よ!』


 冷姫の時間ギリギリの、大きな声での激励。これで、冷姫と榊原と話せるのは、決闘中は一回一分程度で、三回まで。

 しかし、もう話す必要はない。彼の言葉だけで十分だった。


「鳳さん、勝とうぜ」


「勿論よ」


 そう言って、俺達は拳と拳を合わせた。


 そして、カウントダウンが0になり、決闘デュエルが始まる。



ーー今回の地形情報ーー


フィールド、発達都市

天候、晴れ

環境、通常

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