第8回 ニューヨーク、ニューヨーク
最近知った事なのだが、フランク・シナトラの歌うニューヨーク・ニューヨークは1980年の歌である。フランク・シナトラ自体が全盛期を40~60年代と考えていたため、この曲も自然とその辺りと思い込んでいた。いやはや無学とは恐ろしいものである。印象としては未だトミー・ドーシーのblue skyを歌っていたなあ、とかいうレベルなのでその知識は察するべしというべきか。
この曲は、わざわざ言うまでもないのだがヤンキースタジアムで1980年から変わる事なくカーテンコールで使われている曲である。1900年代には野球で使われた星条旗がアメリカの国歌となっていったように、この歌がヤンキースタジアムひいてはニューヨーク非公式ながら州歌になっているのだから面白いものである。まるでヤンキースタジアムやブロンクスがニューヨークの象徴といわんばかりである。そんなおおらかな傲慢さに少しにやけてしまう。どんなに傲慢でも、気持ちの良いものは意外と受け入れてしまうものだ。
しかし、東海岸というのは未だに華々しいオールディジャズの似合う街である。どんなにアメリカを歌った歌があっても、いつしかどこかでフランク・シナトラやルイ・アームストロングに戻ってしまう節がある。アメリカ人も恐らく心のどこかに、彼らにアメリカらしさ、というものを求めているのだろうな、と感じる。それゆえに1980年、もっとただせば1979年に書かれたニューヨーク・ニューヨークにさえ、私達はあのブロンクスの香りを感じてしまうのだろう。ブロンクスの香りはアメリカ一つの象徴なのである。
アメリカの象徴に、フランク・シナトラの歌うニューヨーク・ニューヨークとヤンキースタジアムがある。ブロンクスに悠然とそびえ立ち、おおらかさの残る傲慢な口ぶりからニューヨーク・ニューヨークを歌う。俺がアメリカンベースボールだ。これがアメリカだ、といわんばかりにである。それが、たまらなく気持ちいい。
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