第7回 神奈川とプロ野球

 人生で初めてコミケに行ったり個人の都合で完全にここを放置していた。コミケでは何個が合同誌に作品を記載しているので、調べていただければ嬉しいものである。それらは野球とは関係ないのだが。

 さて神奈川について一カ月なろうかとなってきたのだが、神奈川の横浜ベイスターズに懸ける情熱というものは素晴らしい。元々野球熱の強い福岡育ちで仕事の兼ね合いで広島にも滞在していたのだが、正直に言うと、ベイスターズに対する神奈川の気持ちというものを舐めていた。というのも、ここ数年こそ上昇の気配があるのでそうでもないが、まだDeNAが買い取る前の悲惨な状況を目の当たりにしていると、そういったものなんかを感じなかったのだ。

 これは非常に恥ずかしいのだが、どこかに川崎球場時代のロッテのような印象を持っていた。一応あるにはあるんだけれど、全く知ったことではない。試合? ああ、やってるんだ、程度に考えていた。しかし、住めばそうでもない事が恐ろしいほどわかる。

 それがよくわかるのが各々の市立図書館である。書店というのは割と流動的で、売れるものの指標としても差支えはないのだが、それはあくまで今のものしか置かれていない事がほとんどである。広島カープなんか非常に分かりやすいもので、一時は本屋の野球コーナーはどこもかしこも真っ赤っか、みたいな状況だったのだが、昨今では完全に落ち着いてしまっている。勿論、残り火はあって、恐らくカープ女子が関東を跋扈していた時期に置いてみて結局売れず、返本の際に一冊だけ残したカープの書籍が形見狭しとしょぼんと座っていたりする。そういうものなので、信用性に長けるものでもないし、棚の配置は決定しているので、いきなり増えたり減ったりはしない。一定の数を確保され、売れないものがしょぼくれていたりする。指標としてはこれだけでは不十分なのである。

 一方市立図書館はある程度読まれる蔵書がかなり長い時間残されていたりする。資料価値の上がった古い書籍でもない限りは大抵本棚に並べられている。そこでどの本が読まれているのか、というのは大抵わかったりする。これは面白いもので、例えばサッカー王国静岡では、今でこそ薄れてきているものの、サッカーの書籍が野球の棚をどんどん圧迫していたりする。割と書庫に本があったりするのだが、基本的にはサッカーが強い。静岡ではサッカーの存在が強い事を表している。

 それで神奈川での図書館事情になるのだが、面白い事に横浜ベイスターズの書籍が必ず一冊置かれている。赤坂英一氏が田代富雄について書かれた、最後のクジラがどこの図書館にも置かれている。これだけでももうここの密着具合というものがすごいのだが、それだけではなく、本屋にも必ず置かれている。恐ろしい事に新横浜駅の中にある本屋に、である。本の流動の激しいところから動きの鈍い図書館まで必ず置かれているのは、流石に驚かざるを得ない。神奈川のベイスターズに対する愛情が垣間見える瞬間である。

 何故ここまで言うのか、というと、この書籍が出た2013年以降、私は静岡にいて、本屋にも図書館にも足しげく通っていたのだが、この書籍をほとんど見ておらず、その存在を知ったのがこちらに来てからである。つまりほとんど扱われていないのだ。この段階でも神奈川の横浜ベイスターズに対する愛着が見えてくるのだ。

 元々98年以降ぱっとせず、一方で横浜高校や東海大相模などが甲子園で活躍しているため、高校野球熱の方が強いものかと思っていたが、そうでもないのが面白い。全国的に表立ってないだけで、地域に密着していたのだ。

 今年は応援する広島カープのみならず、横浜ベイスターズも躍進の年である。ぜひこの郷土にそびえるプロ野球チームが活躍し、喜びを分かち合う姿を肌で感じたいものだ。

 しかし、正直に言えば、喜びを分かち合うときは広島カープ戦以外にしていただきたい。つとにそう思う。

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