第3話

 一ノ瀬の言ったとおりだった。数日後、本当に富士山が噴火したのである。そして、想定どうりに火山灰をどかすのを手伝わされていた。周囲は薄暗く、まとわりつく火山灰が鬱陶しい。晴れてきたのは二週間後の事だった。途中、体育館がきしみだしたり、停電したりした。何度一ノ瀬に泣きついたことか。にも関わらず他のメンバーは冷静だった。降灰が収まった後も灰をどかすのは続いたが、意外と早く終わりそうな雰囲気である。その時、灰を掘っていたスコップが何かに刺さった。それは、避難所になっている小学校のグラウンドの土だった。それは思いの外重たく、スコップを抜くのも一苦労である。ん?僕は火山灰の間から覗く、グラウンドの土を見つめる。そして火山灰も見る。色こそ違うが、どちらも砂だ。しゃがんでみてみると、火山灰のほうが発泡している・・・ということもなかった。こんなに火山灰をどかすのが楽なのは、火山灰が軽かったからなのだが、それはおかしなことかもしれない。本当はグラウンドの土と同じくらい重く、下手すれば体育館を押しつぶすようなものかもしれない。と、いうか、降っていた火山灰は、実際に体育館をギシギシ言わせ、電線をぶった切った。にも関わらず、この軽さ。しかし、一ノ瀬に体育館に戻るように言われたので、一旦考えるのを辞めた。

 停電している体育館は薄暗かったが、ラップをぐるぐると巻いておいた電子機器のたぐいは、無事である。手回し発電機付きラジオもまた動き始めた。死者は58名だと告げた。・・・いやこれもおかしい。東京に火山灰が降るような噴火だ。麓で万単位で死んでてもおかしくないと思う。これも災害慣れの成果だというのだろうか。

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