第4話
そして、僕は彼女と旅を始めた。色々な町を巡った。見上げるようなビルの立ち並ぶ街や雪の降りしきる山村。海が見える暖かな町を訪れたこともあった。行く先々で僕らは『魔物』を退治した。と言っても、戦っているのは彼女ばかりで僕は基本的に足手纏いでしかなかった。彼女の力になりたかった。でもなれなかった。
そんな役立たずの僕を彼女は責めなかった。
「別に最初から期待なんてしていないわ」
戦いを終える度、彼女はそう言った。彼女の表情に張り付いていたのは憐れみに思えた。弱い僕への。でも、僕は彼女のその表情の中にいつしか寂しさを見出すようになっていた。
彼女はまだ一人なのだ。僕は『魔物』を認識できるだけ彼女に近いのかもしれない。でも、僕と彼女は違う。彼女は強く、僕は弱い。まだ僕は彼女の背中しか見えていなかった。横に立って彼女の顔を見てみたかった。
何もかもが狂ってしまったこの世界で、ただ一人正しく世界を映す彼女の瞳を。
間違っているのは、世界だ。
正しいのは、彼女だ。
誰も『魔物』に気がつかない世界が狂ってしまっていて、それを認識できる彼女だけが正しい世界を生きているのだ。
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