第4話 概要
「ところで、イーシアさん」
「なんじゃ?」
「転生した方達のこともですが、私が降りる予定の星についての詳細を聞いてもよろしいですか?」
「おお、そうじゃったな。
では、まず始めにこれを見てもらおうかの。
「はい」
御神さんが部屋の電気を消すと同時にちゃぶ台の上に光る半透明の球体が浮かび上がった。
「凄い! まるでウィンドウボールみたいだ……」
「凄いじゃろう!
ただの妖怪や仙人はこのようなことはできん。
まさに神の技じゃよ」
「確かに……と言うかこれを先に見せて貰えれば、すぐに貴女方が神様であると信じたのに……」
確かにこれは凄い。
まるで映画やアニメの世界だ。
しかし、この浮かび上がっている球体、よく見ると大陸や海が描いてあるが、どうやらこの球体が俺の降下する星のようだ。
「この星は、わしが管理する星々のなかでも特に地球に近い環境を保っている星の一つでの。
大きさは地球の約1.2倍、人口は人間・亜人・獣人などを入れて約30億人くらいじゃ。
文化レベルは地球の中世に近いが、異世界のお約束でもある『魔法』が存在するからの。
時代遅れの世界と思って侮っておると、足を
「この星の名前は?」
「この星は現地の住民たちからは『ウル』と呼ばれておる」
「『ウル』ですか……」
なんだか、とあるアドベンチャーゲームみたいな名前だな。
「因みに、魔法はどのくらい普及しているんですかね?
神官や魔導師のような存在しか魔法を行使できないのですか?」
「いや、そうでもない。
一般的とまではいかないが、神官や魔導師以外でも魔法を使える者は少なからず存在する。
まあ、魔法と言っても様々な種類や使い方があるうえに免許制ではないから極端な話、魔法を使えるほどの魔力量があるのかということと、あとは使い方を学んでいるかが鍵じゃな」
「なるほど。
例えば一見、料理人に見える人が強力な魔法を使えるということもあるんですね?」
「まあ極端な例えじゃが、ないとは言えんな。
しかし、強力な魔法を使える者は大体国に仕えたり、何らかの魔導師として独立したりする事例が多いらしいの。 それでも特権階級というわけではないので魔導師でも生活に困っている者もいれば、王の側近として世間に名を馳せている者もいる」
「攻撃魔法の威力や治癒魔法の効き目はどうですか?」
「ピンきりになるが、攻撃魔法は脅かし程度の威力から核兵器並みのものまである。
威力が大きければ大きいほど人手や必要な魔力量も比例して大掛かりなものになるから、個人単位で大規模攻撃魔法を使える者はそうそうおらん」
「でも、ごく少数はいるってことですよね?」
「まあの。
治癒魔法についても同じくピンきりじゃな。
擦り傷程度しか治せないものもあれば、切断された腕や足を即座にくっつけることが出来るものまで様々じゃな。 さすがに切断された頭部をくっつけたり、貫かれた心臓を治しても蘇生は出来んがな……」
まあ、それはそうだろう。
頭を切り飛ばされた人が体と頭部をくっつけたら無事に生き返ったとか怖すぎる。
(それにしても攻撃魔法はともかく、治癒魔法は便利だな。
手術なしに腕や足がくっつくとか、切断面の消毒や感染症とかどうやって防ぐのだろう?)
「治癒魔法を使える人っていうのは、やっぱり神官に多いんですか?」
「いや、全体を見れば確かに神官が多いのは事実じゃが、それ以外にも町医者や冒険者にも使える者はおるぞ?
しかし、治癒魔法も万能とはいかんからの。
例えば癌や慢性病、生まれつきの身体・精神障害は治せん。
また、致死レベルの失血や身体の炭化、強力な感染症など地球の外科医や内科医でも治せんような病気や怪我は治癒魔法でも不可能じゃ。 さっき言った腕や足をくっつけるという行為も条件が幾つかあるようでの。 先ず切断面や欠損部位が壊死していないことや切断された断面の40%以上が綺麗な状態であること、失血の度合いが致死レベルではないことなどじゃ。
勿論、輸血や生理食塩水などは存在せん」
「やっぱり、漫画やゲームみたいにそう都合良くはいきませんね。
麻酔薬などはあるんですか?」
「麻酔薬はあるにはあるが、ほとんど麻薬に近い代物しかないの。
しかも麻酔科医のような専門職はおらぬ。
投薬量次第ではショック死や重度の依存性になってしまう患者もおるから、怪我や病気に罹らぬことをぜひお薦めするの」
「……肝に命じておきますよ」
(怖ええ、異世界の医療!
あ、そういえば魔法はどうやって起動しているんだろう?)
「魔法はどうやって使うんですか? やっぱり、呪文を
「そうじゃな。 この星で魔法を使用する際は通常、呪文を唱える。
しかし全員が全員、長ったらしい呪文を唱えて魔法を発動させるわけではないぞ。
特に戦闘などで長々と呪文を唱えておると危険じゃから、呪文も様々な進化を遂げておる。
例えば、呪文の要所要所のみを詠唱して発動させる短縮呪文や魔導具やお札などを用いて短時間で魔法を発動させる方法などじゃ。 面白いところでは、相手に何の魔法を使用するかを悟らせないために独自に開発した韻を踏んで唱える呪文も存在する」
なるほど。
でも、そういうことなら直接矢を射ち込んだ方が手っ取り早い気もするが、戦争などで使うことを考えれば魔法の方が威力の調整も出来そうだし、大量の弓矢を持ち運ぶこともしないで済む。費用対効果が高いのだろうか?
(魔道具って何だろうなあ?
やっぱりあれかね、チートじみたとんでもない威力とかを持つ魔法の剣とかがあるのかな?)
「あと、魔道具について聞きたいのですが。
ウルでは魔道具と言うのは、どれくらい存在しているんですか?
もしかして結構身近な存在だったりとかします?」
「うむ、それについては御神に説明させるとしよう」
「はい。 ではまず、ウルには『魔道具』と『魔導具』が存在します」
「は? な、なんですか……マドウグとマドウグですか?」
「あ、すみません。 魔道具と魔導具です。
魔法の魔と道具で『魔道具』と、魔導師の魔導と道具の具で『魔導具』の2種類の読み方があるんです。
まず、道具の文字がつく魔道具の方から説明しますが、要するに何かの魔法の機能が付与された物が魔道具です。 例えば、火炎魔法の一部の機能が付与されている携帯コンロやカンテラ、水魔法の機能が付与されたお風呂などが魔法の道具、『魔道具』です。 対して魔導の文字がある方ですが、これは主に魔導師が魔法の発動や魔法の研究に用いる道具のことを
例えば代表的な物で言うと魔法の杖や魔法の剣に魔法の指輪、
勿論、使いこなすにはある一定以上の魔法の知識と魔力が要求されますが」
「なるほど。 そういうことですか」
『魔道具』と『魔導具』か……発音が同じで言葉に出すと分かりにくい。
「まあ、魔法についてはここでぐだぐだと質問するより、現地で直接見たほうが解りやすいと思うがの」
「そうですね。 では、そうします」
「他に何か聞きたいことはあるかえ?」
「そうですねぇ……習慣なんかはそれぞれの土地ごとで違うと思うので聞きませんが、通貨や言葉、種族などについて教えてくれませんか?」
「ふむ……
まず通貨についてじゃが、お主が降りる大陸に存在する国々は刻印は違うがほとんど同じ形の通貨を使っておる。
そしてこれが……その通貨でお主が持って行く予定の
と言って目の前のちゃぶ台に“ゴトン!”という音と共に現れたのは大きな麻袋に入った重そうな荷物だ。袋を開けて中身を確認して見るとすごい数の色とりどりのお金が入っている。色を見るに多分、それぞれ金・銀・銅の通貨なのだろう。
「色からしてわかるとは思うが、これが金貨でそれが銀貨、そしてこの茶色いのが銅貨じゃ」
(うーん、やっぱりファンタジー異世界の定番と言ったら金銀銅の通貨なんだろうけど、現代人の感覚から言ったら通貨としてはデカイよなあ……)
大きさとしては金貨が直径約7センチ前後で厚さは約10ミリ前後、銀貨は直径約5センチ前後で厚さ約5ミリ程度、銅貨が直径約3センチ前後で厚さは銀貨と同じで約5ミリ程度だ。刻印については竜だのどこかの王様らしい人の横顔や俗に言う王家の紋章だのが彫り込まれているが、日本の硬貨のようにかなり精緻に刻印されているのはビックリした。
恐らく偽造防止のためだとは思うが、ここまで綺麗に彫り込まれているのを見ると日本の硬貨にも引けを取らない工作精度だ。異世界のコインだからどうせいい加減な感じの刻印なのだろうと思っていたのだが、ちょっと反省である。と、そんなことを考えながら麻袋の中身を見ていると、ちょっと違う大きさの金貨が麻袋の底の方にあることに気付いた。
色からして金貨であることは分かるのだが、他の金貨と比べてかなり大きくズッシリと重い。刻印は最初に見た金貨とほぼ同じなのだがサイズがかなり大きく、直径は約12センチ前後、厚さは多分20ミリくらいあるだろうか?明らかに異質な感じがする金貨だ。
「このデカイ金貨は、一体何ですか?」
「それは、『重金貨』と呼ばれている金貨じゃな。
その金貨は扱いが特殊での。
通常の金貨が貴族や
そのため王族以外では財政担当の貴族や予算管理の貴族官僚や極一部の文官くらいしか、目にしない物じゃ。
普通の通貨としても使えんことはないじゃろうが、両替が大変じゃろうのう」
「いや、街中でこれ使ったら強盗の群れが金魚の糞みたいにぞろぞろと列を成すと思うんですが……」
「そうですよ先輩。
そんなことになったら孝司さんが殺されてしまいます」
「いやいやいや!
殺される以前に自分がこの金貨を使うことを前提にしないでください」
(こんな金貨を持ってたら命が幾つあっても足りないよ!
って言うか、こんな物騒な金貨を俺に持たせようとしてたの!?
しかも、こんなに沢山!!)
「この金貨、持って行けと言われても持って行きませんからね?
異世界を調査する前に死んでしまいますよ!」
「なんじゃ?
せっかく金に不自由せんようにという
お主、結構遠慮するタイプなんじゃなあ……
「いや、ちゃいますって!
こんなに大量の金貨を入れた袋を担いでいるのを誰かに見られたりしたら、おちおち寝ることも出来ないですよ!」
「それは心配せずとも良いぞ。
お主にはきっちりと調査に励んで貰わなければいかんからの。
荷物を収納できる神特製の空間ストレージ魔法を授けてやろう。
それを使えば最大500トンまでの荷物を収納可能じゃ。
しかも、ストレージ内の時間は止まったままじゃから、生鮮食品や生ものの保管も出来て便利じゃぞ」
「それはとてもありがたいのですが、それでも重金貨は要りません。
代わりに使い易い銀貨の方を入れて貰えれば助かります」
「わかった。
では、お主の要望通り銀貨を多めに入れておくとしよう」
「ええ。 そっちのほうが助かります。
あと言葉と種族などを教えてもらえますか?」
「よかろう。
まず言葉じゃが、そのまま日本語で大丈夫じゃ。 安心せい」
「あ〜、あれですか? もしかして異世界トリップすると自動的に現地の言葉や文字を理解出来るっていう安心機能でもあるんですか?」
「いや、そうではない。
向こうで普通に日本語と英語が普及しているだけじゃ」
「はあ!? 何ですかそれ!?」
「いやな……まだウルで言語が充分発達していなかった時代、人間を含め種族間の意思疎通が出来ずに度々戦争や小競り合いが度々起きておったのじゃ。
まあ、最初はそれでも相手の言語を徐々に理解し尊重しあって他種族同士、身振り手振りからでも良いからコミュニケーションをとると思っておったのじゃが……一向に相手の言語や文化・風習を理解しようとしなかったんじゃ、ウルの原住民達は……」
「でも、それと日本語と英語がどう関係するんですか?」
「うん、まあ……あれじゃ。
当時地球は第2次世界大戦が勃発しておったから、御神にお願いして空襲や戦闘で夫や妻子を亡くして悲嘆に暮れている国民学校の国語教師などや戦場で瀕死の重症を負っている教員資格や牧師の資格を持つ米軍兵士を……」
「まさか
「攫ってはおらん。
ただ本人をわしの元に連れて来て本人の承諾のもと、ウルに送り込んだだけじゃ」
「同じですよ!
大体、当時の日本人やアメリカ人なら頼んできた相手が神様だったら二つ返事でウルに行くと思いますけどね?」
俺ははっきり言って呆れてしまった。
まさか、神様が某半島の国のように日本人やアメリカ人を拉致して異世界に送り込んでいて、それを地球の神様が協力していたなんて……
(しかも、目的が日本語や英語の教育だったなんて……本当にあの某国と一緒じゃないか!)
「はあ……わかりました。
まあ攫ってきたことは置いといて、じゃあウルで広く使われている言語は日本語と英語であると理解していいんですね?」
「攫って来たと言われるのは心外じゃが……そうじゃの。
ほかに幾つかエルフ語や古代語、獣人独特の言語が存在するが、お主がウルに行くときに全ての言葉と文字を理解出来るようにしておいてやろう」
「ああ、それは助かりますね。
私は英語については身振り手振りの片言でしか話せませんから、英語が理解できるのは嬉しいです……」
(……ん? あれ?)
「あの〜、イーシアさん?」
「なんじゃ?」
「今、ふと思ったんですが、ウルでは日本語や英語って何ていう言語で呼ばれているんですか?」
「それは勿論、日本語は『日本語』、英語は『英語』で呼ばれておる」
「と言うことは、ウルには日本という国名や英国やアメリカと言う国名の国があるということですか?」
「いや、そんな国はないぞ」
「でもそれはおかしいでしょう?
それじゃあウルの住民は日本語や英語がどうやって伝わったのか理解しているのですか?
日本語と英語が何処から誰によってどうやって伝わったのか、元々はどこの国のどこの民族の言語だったのか、伝えた者はどこの国の出身だったのかを疑問に思っている人や研究している人が沢山いるんじゃないですか?」
「……言われてみれば、そうじゃのう」
「そう言えば、そうですねえ」
「考えたこともなかったんですか?」
「うむ……」
「はい」
(ええっ〜、それはないんじゃない?)
ただ単に言語の発達ばかりに気を取られて、そこまで考えが回らなかったってことなのか?
随分といい加減なものである。
「まあ、言語に不自由しないようになるのは助かりますが……あと種族も教えてください」
「種族については人間を含めて多種多様じゃな。
大別すると人間・獣人・亜人・魔族・魔物・動物じゃ。
人間はお主のような人間じゃな。
獣人は俗に言う獣の耳や尻尾、目に体毛などを持つ人型の生き物じゃ。
亜人はより人間に近い存在での。
ただ、人間以上に長命であったり、魔法の扱いに長けておるとかじゃ。
エルフなどがこれに当たる。
魔族は人の姿に頭や背中に角や翼があり、地球で言う悪魔のような尻尾などを持つ種族で、特性上エルフなどと同じで魔法の扱いに長けておる者が多く、魔力量も人間より多いのが特徴じゃ。
魔物は簡単に言うと動物の姿でありながら、人間のように2本の足で立ち、道具を使い、言語を介してコミュニケーションもとれる種族のことじゃ。
まあ要するに人間の姿を動物に置き換えたものじゃな。
動物はそのまま動物じゃ」
(うーん……やっぱりエルフとか魔族とかっているのかあ)
漫画やアニメではエルフや魔族ってものすごい美人がいる印象があるのだが、実際にはどうなのだろう?
果たして目の前の神様2柱を超える美女はいるのだろうか?
「エルフとか魔族とかってやっぱり異世界の定番なんですね」
「そりゃあそうじゃ。 異世界じゃからの。
他に聞きたいことは、あるかえ?」
(きたきた! 俺にとって一番の関心事が)
「そうですね。
私がウルに行くにあたり、地球に残される家族の今後の処遇と持ち込める物品についてお尋ねしたいですね」
そう、これが一番大事だ。
本来、死ぬはずだった俺には家族がいる。もうすぐ68を迎える母と7歳上の姉のことだ。
俺には父はいない。
父は俺が高校を卒業して地元の国立大学に入学後、交通事故で亡くなったからだ。祖母と祖父は数年前にガンと心筋梗塞で亡くなっているし、俺が居なくなると母と結婚している姉が残されることになるのだが、気になるのが母の今後のことだ。
多分、神様の予定通り俺が死んだとしても姉とその旦那さんの性格からして母の面倒を見てくれると思うのだが、姉には姉の家庭があるので将来もし母が認知症になったり病気に罹ってしまうのが怖い。
今はまだ元気に働いているが、いつそうなるのかわからないからだ。
最低でもこの問題が解決されない場合、おいそれと異世界に行くわけにはいかない。
「ふうむ……お主が心配しておるのは、お主の母親のことであろう?」
さすが神様、こちらの事情をよく分かっているようだ。
「そうです。 これが解決されないと私は異世界には行きません」
「それについては心配の必要はなかろう。 のう、御神?」
「はい。 それについては心配ありません。
私が責任を持って全力でバックアップしますので」
「具体的にはどのように?」
「はい。
まずは孝司さんのお姉さんにサッカー宝くじを買ってもらうように運命を仕向け、私の力で1等10億円に当選させます。
これで孝司さんのご家庭の財政面はクリアされますから、あとはお母さんを含むご家族の方々のお
「それは凄いですね。
一つお願いしておきたいのですが、10億円の宝くじが当たっても家族の性格が変わったり、金遣いが荒くならないようにお願いします」
「はい。 わかりました」
神様の力なら大丈夫だ。
相手が誰であろうとも覆すことは不可能だから、これについては心配する必要は全くないだろう。
あとは……
「ところで私はどうなります? やっぱり死んだことになるんですか?」
「いえ、孝司さんは死んでいませんからそれは出来ません。
そのためご家族の方々を含め、孝司さんのあらゆる記憶や記録、情報を私の力で抹消します。
孝司さんは最初から地球に存在していなかったということになるのです」
「それは役所や銀行、インターネットやSNS上からも抹消されるんですか?」
「そうです。
コンピューターや書類、あらゆる媒体からも抹消されます」
自分の情報や記録がなくなる。
口で言うのは簡単だが、なんだか心がちょっとズキってくる話だ。
家族の記憶からも俺の存在が消されるなんて……
「わかりました。
自分の記憶や記録
「そうですか。 そう言って貰えれば私としても一安心です」
明らかに安心した表情を見せる御神さん。
多分、俺がなんか言ってくると思ったんだろうが、家族に対してあそこまでしてくれれば充分過ぎるほどである。
「あとは何が聞きたいのじゃ?」
「ウルに持ち込める物品についてです」
「うむ。
物品か……して、どのような物を持って行きたいのじゃ?」
「えっと……幾つかの生活用品と携行食に飲料水。
あとは乗り物と銃を持って行きたいのですが」
「生活用品や食べ物は分かるが、乗り物と銃かえ?」
乗り物と銃という単語を聞いた瞬間、イーシアさんの眉がピクンと動いたのを俺は見逃さなかった。やはり予想していた通り、異世界に車輌や銃を持ち込むのは不可能なのだろうか?
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