《(2)御伽草子》
第10日 終末暦6531年 3月10日(木)
終末暦6531年 3月10日(木) くもりのち晴れ チョコパフェ
今朝、図書館に行ったら泊まり込みの仕事を館長から頼まれた。御伽草子のテリトリへ行って、《終わらない話》を持って帰るのがその内容だ。
「あと、悪いんだけどね。御伽草子のテリトリに行くとき、番傘屋のテリトリを通るだろう?そのときにイノウエさんの回収も頼むよ。あそこにある工場群の中の下水道まで流されたみたいだからね。必要なチケットを渡すからすぐに向かってもらえるかな?」
こうして私はチケットを受け取って仕事に出かけた。館長が余分にチケットをくれたのでトキノも一緒だ。
風見堂のテリトリの中心街にある翁草駅には、伏線をはじめ生命線や一次曲線などたくさんの路線が通っている。今日は「行き先を忘れたため」という理由で忘却曲線が一時運休になっていたくらいだった。
私たちが乗ったのは生命線で、思った通り振替乗車で混んでいた。そのまま、三分足らずでテリトリ境にある金魚草駅に到着したので、番傘屋に寄って、先日に記した影について報告した。番傘屋は昨日のテレビ男の件を何故か気にしていて、しきりに話を聞きたがっていた。他にも色々話したけれど長かったので省略する。そこからさらに一駅先でイノウエさんを回収した。イノウエさんには帰りのチケットを渡した。本人には言えなかったけれど、イノウエさんはかなり臭くなってしまっていて可哀想だった。
それから私とトキノは電車に乗って、ひたすら長い長い生命線を走った。運良く座れたので、荷物とトキノを膝の上で抱えた。サイハテの町の果ての方にある御伽草子のテリトリ。確か人魚のウオノメさんの歌っていた歌を作った人がいるはずだ。
「あの歌、とても素敵だったよね」
星の海を走る電車に揺られながらそう言うと、
「なら、お前もそいつに歌を作ってもらえば良いんじゃないか?」
とトキノは応えた。確かに良いかもしれない。
「トキノも歌を作ってもらいなよ、せっかくだから」
「俺はいーよ。音痴だし」
恥ずかしそうなトキノがちょっと可愛かった。
夕飯には駅弁のチョコパフェを食べた。かなり大きかったので、トキノと分けた。かなり甘かった。虫歯にならないように、お手洗いで歯を一生懸命磨いた。
追記:御伽草子のテリトリの竜胆駅には明日の朝9時到着予定。
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