第7日 終末暦6531年 3月7日(月)

終末暦6531年 3月7日(月) 雨 カニカマサラダ


 朝から夜まで雨がやまなかった。仕方がないので黄昏図書館に電話したら、部屋まで仕事を届けると館長に言われた。


「やっぱり普通の雨はつらいか?」


 トキノに言われて、私は泣きそうになった。雨ノ市はある程度平気になってきたけど、空から降る普通の雨はどうしても怖い。音も匂いも気配も。いつものように私は部屋の隅で布団を被って震えていた。


 イノウエさんが仕事を届けに来てくれたのは午後のことだった。おやつに手作りクッキーを置いていってくれた。何だか懐かしい味がした。イノウエさんはイノウエさんで、ミナミさんの雨漏りの件が済んでいなかったらしく少し急いでいた。またトイレに流されないと良いのだけれど。

 館長は書類整理の仕事を回してくれた。記した影の物語をファイルにまとめるのだ。トキノも手伝ってくれた。まさに猫の手も借りたといったところ。

 隣のカシワギさんが、クレソンを持ってきてくれた。トキノ曰く、

「大家さんから聞きました。雨が苦手なんだそうですね。よろしければ、これを食べて英気を養ってください」

 と言ってくれたそうだ。


 トキノがカニカマサラダを作ってくれた。クレソンとレタスとカニカマを合わせていた。


「味付け何が良いんだ?シーザーか?ごまドレか?」

「……マヨネーズ」


 そう言ったらマヨネーズであえて出してくれた。布団の中でそれを食べた。


日記を書きながらトキノに「いつか雨が平気になるときがくるかな」と聞いてみた。

「俺が知るか」

トキノは面倒そうに言って、

「けど、ここは終末の町、サイハテだ。お前は、ちゃんと終わりを持っている。いつかは分からないが、その恐怖が終わるときも来るだろうよ」

 とか言いながら、布団の中に入ってきてくれた。


「雨の日は肌寒いからな。しっかり俺を温めろ」


 日記を書き終えたら、そうしてあげるつもりだ。

 今日は一日中、布団にこもってしまった。明日は晴れてほしいと思った。



追記:口に出したら不機嫌になるからここに書く。

ありがとう、トキノ。

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