第4話お昼ご飯

「ねぇ~雫ちゃんってば~ごめんってば~アレは仕方なかったんだってば~」

てばてば煩いな…

「だっておかしいだろ?!このベットの主はわたし!なのになんで先にありさが寝て、しかも寝相も悪いの!私寝れないどころかベットから追い出されて眠いのに寝れないわで怒ってるんだからね!?」

「主って雫ちゃん…それじゃベットがペットみたいだゾ?」

きゃぴるん☆ってするな、きゃぴるん☆って。

結局ありさがぐっすり寝てしまってもう時計を見れば12時だ。

「私のことあれだけ睡眠がどうこう言ってきたありささん?時計をご覧になって?もう12時ですわよ?YOUは何しに我が家へ!?!?」

「し、雫ちゃん?今日なんか調子悪いの?!大丈夫?いつも以上に増しておかしな子になってるよ?」

「そりゃ怒るのも当然じゃボケ。こちらは睡眠を1日に2度も妨害されたんだ!しかも同じ人にね!」

「わかったわかった。ごめんね雫ちゃん。もうお昼みたいだしお詫びにお昼は私が作るからさ。ね?」

やはりこいつはどういう時にどういう顔をすればいいのかを知っている。お願いするときは上目遣い。ずるいよなーほんと。

「じ、じゃあお願いしようかな。そこまで言うなら仕方ない」

「冷蔵庫にあるものは勝手に使っていいかな?いいなら勝手に台所使わせてもらうね」

「……え?」

いやはやいな。そんな早く部屋を出て、大きな罪悪感でもあったのか。しかも私了承してないし。

少し拗ねながら階段を下りる。

早くもありさは冷蔵庫を開けて、何にしようかなーうーん。卵はあるのかー。と独り言満載だ。

お、下りてきたの気づかれた。

「あっ、雫ちゃんはリビングでテレビでも見ててー!」

「お前は母親か。言われなくてもそうするつもり」

なんか言ってるけど立ち止まらず気づいたらリビングへ足を向けて歩いていた。

なんか面白い番組でもやってるかなー。お昼だしドラマの再放送とかニュースとかしかやってないかなー。

とりあえずテレビをつけた。おおなるほど。日経平均が上下激しいのか。上がってくれればいいな。そんなことを考えながら、ぼーっと画面を眺めていれば目の前は真っ暗。

ここで勘違いをしないでほしい。間違ってもポ○モンで草むらから出てきたモンスターに負けて真っ暗になったわけではなかった。

人というのは切り替えが難しい生き物だ。安心しきってぼーっとしていた私に状況を読み込むのにかかった時間は5秒もかかった。戦場だったら死んでるぞ。私。

「んんっ!だーれだ」

声を低くしてわからないとでも思っているのかなありささん?もしそうだとしたらあなたの頭は素晴らしいお花畑が広がっているだろうに。

「ありさ、お腹空いたんだけど。もしかして失敗して食材がなくなっちゃったよーって話じゃないよね?」

「ちがうちがーう。もうできたもん。だからしずくちゃーんって何度も呼んだんだけど雫ちゃん来てくれないから寝てるのかなと思って」

「寝てるとしてもだーれだ、をやっても目をつぶってるんだから気づかないだろ普通」

「あっ、そうだったそうだった」

「で、ご飯。できたの?」

「できたよー。なんと今日のお昼はオムライスです!」

のどが鳴った。小娘め。私の好物でご機嫌を取る気だなこのやろう。胃袋をつかまれたらもうどうしようもないじゃないか。

「さあ雫ちゃん。食べよ?」

料理スキルだけは人並にあるんだからこの子すごい。もしかして薬でも飲んで中学生にでもなったのかしら。でも名探偵じゃないからそれはないか。


――おいしかった。

それはとてもおいしかった。でも今は複雑な状況だ。

人は満腹になると眠くなる。言わずもがな誰もが知れた大常識である。よって私は今とても眠い。だが目の前のありさ大菩薩にお願いをされている。

「買い物、行かない?」

「行かない」

「なんでよーご飯作ったじゃん!」

「食べると眠くなるんだよ」

「えーそういう問題!?じゃあお昼寝してから行こっか」

「やだ」

「なんでよ!?」

「ありさと一緒に寝ると寝れない大発見をしてしまったから。なんで今まで何度も一緒に寝たのにおとなしく寝れたの」

「それはほら…雫ちゃんが寝るのを待って雫ちゃんを抱き枕にして寝てたんだけどね、なんか今日は眠くて先に寝ちゃったらいつもの抱き枕もないし雫ちゃん枕もないから寝相が悪くなっちゃったんじゃないかな!?」

「なるほどなるほどで済めばいいんだけどね、この話。新しい爆弾落としちゃってどうすんのあんた。私抱き枕になってたの!?知らなかったよ私」

「え?知らなかったの!?てっきり知ってて何も言ってこなかったのかと思ってたよ」

「大体朝は抱き着いてないじゃん!」

「ああ、あれはね、寝てるうちに抱き枕は用済みになるようで…朝には不要になってるみたい」

きゃぴるん☆ってするなきゃぴるん☆って。

「お、おう。私は今なんか振られたような気がして悲しいぞ!」

「てか雫ちゃん元気じゃん!じゃあ決まりね!1時30分に雫ちゃん家の前集合!よろしく!」

入ってくるのも容赦なかったけど出ていくのも容赦なかったなぁ。

てかあと40分あるじゃん。そんなことを空中で考えてたふとテーブルを見下ろす。

――食器洗っていかなかったのかそういえば。

まあ食器洗って準備したらすぐ時間なんて来るか。

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