夜に星があるならば

穴田丘呼

星に願いを

人工灯火は火の海に。そこらじゅうが延焼して、空が燃えてる。星はその裁きのもとに消えゆく運命。そこにあるのは何ですか? ここからあそこに行くには星の階段を登らなくては。しかし、それも消えてなくなっているじゃないか。

「ぼくはどうしてか、戦いに駆り出されているんですよ。もうずいぶん前に」

涙を流した淑女がいう。

「わかってます。あなたのことだから」

ご存知ですか? この間、ケルンに行って来ました。ケルンです。ドイツ語なのでわからなかった。ケルンてパン屋さんなんですよ。ケルンてカタカナであったからわかりました。そこのパンはすこぶる美味しいのです。

ぼくは身構えた。銃弾が飛び交っているからだ。


人間のやるべきことは何なんだ? このままでいいのか? ダメだろう。でもどうしたらいいんだ。そのすべがわからない。でも、わからないと手をこまねいていても仕方がないじゃないか。ぼくらにできることをするんだ。

「あなたは死をもってそうするでしょう」

上を見て!

「あの星が見えるだろうか?」

 ビーナスだ。明けの明星。金星とも言う。あの星が見えなくなったなら、人類は滅亡するかもしれない。

「ねえ、ここにいて。ここから去らないで」

「ごめん。ぼくは行かなくては。泣かないでおくれ」

 さあ、行くんだ。足を振って。前に。そしてどこまでも。


ぼくらは、イ・キ・テ・イ・ル。

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夜に星があるならば 穴田丘呼 @paranoia

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