切裂少女と縫合少年

@godaccel_write

第一章 幕開け 

 シャキ、シャキ。

 金属同士が擦れ合う音が響いている。

 村のはずれにある大きな森。その奥に立派なお屋敷があった。

 人の世から隔離された空間にある館は、村の人間すら立ち入ることを許さない雰囲気がにじみ出ていた。

 シャキ、シャキ。

 時折森の奥から聞こえてくるこの音が、村人たちに恐怖を与えていた。

 しかし、村人たちはその音を聞くことである種の安心を抱いていた。

 この音がなり続ける限り、この村は平和な暮らしが続くという伝承があるからだ。

 それゆえに、恐怖は日常化して村人たちに安寧の日々を過ごさせていた。

 シャキ、シャキ。

 今日も恐怖の音は響いている。

 誰もその音の出所は知らない。知ろうとも思わない。

 その音が鳴り止まないと信じ続けている。

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