第2章 海竜の試練と絆の契約 後編


「湖からの気配が消えないってどういう…?」

 困惑するガラハッドをよそにロゼイアは目を瞑って気配を探る。湖からの気配――魔力はセイレーンやルサルカからではなかったのか。

 確かにセイレーンもルサルカも湖の外にいた。冷静に考えれば湖の外にいるにも係わらず湖の中から魔力がするというのはおかしな話だった。ということはこの魔力は全て湖の中の悪魔のものなのか。ルサルカ達に気を取られて気が付かなかったが湖からは相当強い魔力が出ている。これがセイレーンの時のように複数体から出ているものであれば良いがもし1体から出ているとすれば

「湖の中にいるの、多分1体だけだと思う」

「それが本当ならいったん引くぞ。1体でこの魔力ということはこの中にいるのは、間違いなく上級悪魔だ」

言うが早いか湖の水が吹き上がる。

「これは……」

 その中から現れたのは蛇とよく似た生物。竜、と呼称する方が正しいかもしれない。

 長い胴体は硬い鱗で覆われ綺麗な蒼色。月明かりに照らされてより一層美しく見えるその姿には神々しさすら感じるほど。

 体はそれほど大きくなく、といっても人からすればかなりの巨体であり、大人でも何人もやすやすと飲み込めてしまいそうである。

 鰭もみられるため竜や蛇でないことは分かる。

 ロゼイアもガラハッドも話には聞いても初めて見る悪魔だった。

「リヴァイアサン…上級悪魔の中でも特に強い部類に入る悪魔だ。でもどうして…」

 リヴァイアサンもセイレーン同様海に棲む悪魔である。湖に出現したなどという話は聞いたことがない。ということはリヴァイアサンも誰かが召喚したのか。

 しかし、今最優先させるべきは退却である。ただでさえ上級悪魔は強いというのにルサルカと戦い疲労困憊の状態のロゼイアを連れて勝てるはずがない。

「ロゼイア逃げるぞ!!」

「う、うん!」

 しかし、それを阻むようにリヴァイアサンは尻尾で2人の近くの地面を叩き付ける。土が舞い上がる。

「くっ…」

 銃声と共にリヴァイアサンの胴体に魔弾が撃ち込まれるが、全て鱗に弾かれほとんど効果はない。

「2人とも、大丈夫ですか!?」

 何処からかケイの叫び声がする。姿を探すと対岸の畔に立っているのが見えた。

 が、次の瞬間。ケイを尻尾が襲う。尻尾で薙ぎ払われたケイは木に衝突し背中を強打してその場で倒れこむ。

 ケイを心配する間もなくリヴァイアサンの尻尾は2人を狙う。

「危ない!!」

 ロゼイアをかばってガラハッドは尻尾に打たれながらも尻尾の軌道をそらす。その衝撃でケイ同様弾き飛ばされ木に衝突して倒れこむ。

「ガラハッド!!どうしよう…」

 2人を置いて逃げるわけにもいかない。かといって2人を抱えて逃げるのも無理だろう。だとすれば、できることは1つ。

「勝てる自信はないけど、でも、やるしかない!!」

 ロゼイアは足に風の精霊術を纏わせると跳躍してリヴァイアサンの胴体に飛び乗る。

「やめろ、ロゼイア…」

 ガラハッドのうめき声はロゼイアには届かない。

 ロゼイアは再び跳躍してリヴァイアサンの頭に魔力を籠めた右手で殴り、続けて左手にも魔力を籠めて殴る。リヴァイアサンはうめき声をあげて暴れる。何とかしがみつくロゼイアだったが連戦の疲れと魔力の消耗により力が抜けて振り落とされ湖に落ちる。そこを狙いリヴァイアサンは尻尾を叩き付ける。水飛沫が上がり舞い上がった水が周囲に雨のように降り注ぐ。

 その瞬間、湖が緑色に光る。それと同時に湖の水が弾け飛ぶように飛散する。

「なんだ……?ロゼイア?」

驚くガラハッドをよそに光は徐々に弱まりその中から現れたのは、ロゼイアだった。

ロゼイアの全身には薄く衣のように緑の光が纏わりついている。その光は風の精霊術の光とよく似ていた。が、明らかに違うのはおぞましいほどの魔力。リヴァイアサンと同等、いやそれ以上の魔力だ。

宙に浮くロゼイアをリヴァイアサンの尻尾が襲うがそれを右手だけで受け止め微動だにしない。それどころか尻尾を弾き返す。ロゼイアはリヴァイアサンの眼前に迫りその横面を右足で蹴り飛ばす。湖に倒れたリヴァイアサンに踵落としをくらわせると水飛沫があがった。

ロゼイアは宙に浮いたまま陸地へ移動し地面に降りると光は消えロゼイアもその場に倒れたが、上体だけ起こしてリヴァイアサンをしっかりと見据え、

「寂しかったよね、苦しかったよね。そんな狭いところにたった1人で。でももう大丈夫だから。僕が1人にしないから、ずっとそばにいるから」

 そう呟くと、意識を失った。対するリヴァイアサンも湖の中からゆっくりと起き上がる。

「こいつ、まだ……」

 何とか立ち上がり、剣を構えるガラハッドだったが、リヴァイアサンはガラハッドには目もくれずロゼイアを凝視する。

 その姿からは敵意のようなものは感じられなかった。

 困惑するガラハッドをよそにリヴァイアサンは、呟く。

『こやつ、悪魔と……』

 リヴァイアサンは目を閉じて暫し逡巡した後

『いいだろう、人の命など短きもの。付き合うのもまた一興』

 それだけ言うとリヴァイアサンは再び目を閉じてガラハッドに問う。

『この少年の名は何という』

「何をする気だ…?」

『この人間と契約を交わす』

「そうと知って教えるわけないだろう!!」

 それを聞いて、ガラハッドは声を荒げる。それもそうだ。悪魔との契約には条件が必要だ。その条件というのは契約する悪魔にもよるがそのほとんどが自らの魂を悪魔に捧げる――つまり自身の寿命をすり減らして契約するのだ。

 精霊術を使用する場合にも精霊に対価として魔力とは別に、マナ――生命エネルギーを与えているがそれは時と共に回復する、いわば魔力のようなものである。が、マナの過度な使用は直接的に寿命の減少に繋がるが、それでもほんの数秒程度のものである。

 対する悪魔との契約は精霊の比ではない。何年という年月を対価とする場合もあれば何十年という年月を対価とする悪魔もいる。それもまた、悪魔によってまちまちなのであるが。リヴァイアサンはどうなのか。

 契約を交わすということはつまりはロゼイアの寿命を奪うということである。

『案ずるな。この小僧とは無条件で契約を結んでやろう』

「その言葉を、悪魔の囁きを信用しろと?」

『信じるも信じぬも貴様らの自由だが、現状を見ろ。わざわざ契約などしなくとも今ここで貴様らを殺すことなど容易なことだ』

 確かにそうだ。ガラハッドもフラフラの状態。ケイやロゼイアの意識はない。この状態で戦ったところで勝ち目はない。だからといって悪魔の言うことを信用もできない。

「1つ聞かせろ。なぜロゼイアと契約をする」

 その言葉を聞いたリヴァイアサンはクックックと喉の奥で笑うと

『見たくなっただけだ。魔の力とともに歩く人間の末路を。その旅路の果てを』

「悪魔の無条件契約など聞いたことがない」

『ならば、条件を提示しよう。我と契約せしこの少年の命尽きし時まで我と共にあること。それが条件だ』

 まだリヴァイアサンを訝しむガラハッドだったが、意識が薄れていくのを感じ、腹をくくった。

「どのみち死ぬのなら、一か八かの賭けだ。こいつの名は、ロゼイアだ」

『ロゼイア、か。承知した。少年、汝の名は』

「ガラハッド、だ」

 ガラハッドもそこで意識が途絶えた。

『礼を言うぞ。ガラハッド』

 リヴァイアサンはガラハッドに短く礼を言うとそこで1度区切りそして、契約の言葉を続けた。

『我が名、リヴァイアサン。ロゼイアの名においてここに契約を結ぶ。彼の者を主とし、比翼ひよくの鳥となり、連理の枝となり、この命尽きるまで主の矛となり盾となることを誓う』

 リヴァイアサンとロゼイアの体が同時に一瞬光に包まれる。

 リヴァイアサンは先ほどのロゼイアの言葉を頭の中で反芻していた。

『1人にしない、ずっとそばにいる、か。ふっ、ガキが……』

 リヴァイアサンのその言葉にはどこか嬉しさや喜びのようなものが混じっていたが、誰に聞かれるでもなく夜の静寂に包まれて消えた。

 その後、リヴァイアサンを光が包むとやがてそれはリヴァイアサンと共に収縮し拳ほどの小さな光の球体となると、ロゼイアの中に入って消えた。


――同時刻・湖――

 「観察対象、意識不明。後はこれを風書ふうしょで送るだけ」

 ロゼイアたちのいる湖の畔から少し離れたところにいた少女はそう呟きと手に持っていた紙に何かを書くと、それを丸めて緩く紐で結び掌に乗せて何事か呟く。すると、紙は淡い緑色の光に包まれる。その後、ふっと消える。

 風書とは契約した風精霊に書物を運んでもらう精霊術の1種である。風精霊は感覚が鋭敏であり記憶力もよく、人の魔力を区別できる。1度その人の魔力を覚えさせればその人の場所まで高速で書物を運んでくれるため重宝されている。

「これでよしっと」

 少女はそう呟くと闇に紛れて消えた。



――翌日・レイドルフ――

 ガラハッド達が出発した次の日の朝、教会を出ていこうとするランスロットをパーシヴァルが呼び止める。

「ランスロット様、どちらへ?まだ傷も……」

 傷も癒えていない、そう言おうとしていたパーシヴァルだったがランスロットを見て負傷したはずの右腕が無傷なのを見て言いよどむ。

 傷が癒えている。たった2日で。いや、それほどの深い傷だったろうか。

 そう考えを巡らせていたパーシヴァルはあることに気が付いた。

 そういえば、誰もランスロットの怪我を診ていないのだ。よくよく考えれば浅い傷程度ならばパーシヴァルかネロに頼めばすぐに治癒魔法を施すことも出来たはずだ。なのに、何故それをしなかったのか。考えられる理由は幾つかあるが、例えばもし、初めから怪我をしていなかったとしたら。

「冥屋跡地へな。どれほど損壊しているのか見ておきたいのでな」

「ならば私も同行します」

「疑っているのか?」

「いえ、まさか」

 2人はそれだけ言葉を交わすと教会を後にする。

 その後でフォルカに何か書置きでもと思ったが、どうせ冥屋跡地までは往復で1時間の道程であるため、必要ないだろうと思いそのままランスロットの後を追った。


「あれは、パーシヴァル様とランスロット様?一体どこへ?」

 その姿を教会の2階から見かけたネロは窓際で立ち止まる。

「あれ、ランスロット様、怪我…」

 ネロもランスロットの怪我についての疑問を持つが、パーシヴァルが同行していたことからパーシヴァルが治療したのだろうと思い、気にせずに

そのまま執務を続けるため歩き出す。


――冥屋跡地――

 およそ30分の道程を歩き終わり、冥屋跡地に到着した。冥屋は見る影もなく崩れていた。

「ガラハッド達の話だと上から複数体のラビットが襲ってきてその重さに耐えきれず崩壊したそうです」

 パーシヴァルの説明を半分聞き流しながらランスロットは残骸に近づき掻き分けていく。パーシヴァルが訝しげに見るのをよそにランスロットは残骸を取り払いソファを見つけ出すとそこに腰掛ける。

「残骸を取り払いましょうか?私の術ならすぐに」

「いや、いい。……もうここに戻ってくることはないからな」

「それってどういう…?」

 パーシヴァルの質問を黙殺しランスロットは続ける。

「此処だけに何故、冥屋の支店があったか知ってるか?こんな、何にも、悪魔すらほとんど出ないようなところに」

「えっ?それは……」

 そういえばそんなこと考えたことはなかった。言われてみれば確かにおかしい。その思考を遮るようにランスロットは語る。

「此処は、俺とモルドレットとアーサーの3人で暮らした家だったんだよ。今にしてみればなんでこんな、町からも離れた辺鄙へんぴな空き地に住んでいたのかは分らんが、アーサーたっての希望でな。ガラハッド達に任せることにしたんだ。お前もいたしな」

「だったら、なおさら」

「言ったろう?ここはもう必要ないと。ここに帰ってくることはない。もう、誰もな」

「それは、どういう?」

 パーシヴァルの問いに今度は不敵に笑うことで応えるランスロットにまた不信感を抱く。そして同じ問いを繰り返す。

「怪我のことですが……」

「あぁ、これか。これはネロに治してもらった」

 納得のいかない顔のパーシヴァルだったがしかしランスロットの言っていることの整合性はある。この問答に意味はない。そう思うことにした。しかし、

 ランスロットはやれやれ、という顔をした後立ち上がりパーシヴァルの横を通り過ぎた後で立ち止まる。

「なんのつもりだ?」

 ランスロットは自分の背中に杖を突き付けているパーシヴァルに問う。

「私の直感が告げてるの。あなたは怪しいって」

「まさか何十年来の仲間に疑われるとはな」

「私も自分の行動は間違ってると思ってる。でも、あなたと互角に戦える大剣使いなんてそうそういない。私が知る中ではただ1人だけ。そして、あれほどの魔法と精霊術の使い手もこの国には数えるほどしかいないわ。そして貴方達から考えられる術者もただ1人。その2人の名は……」

 パーシヴァルがその名を告げるより早く、パーシヴァルの背に何かが飛来し衝撃を与える。

 薄れる意識の中最後に見たのは不安そうにパーシヴァルを見下ろすランスロットだった。



「意識は本当にもうないのか?」

「えぇ。完全に意識は途絶えました」

 ランスロットは自分の足元に倒れたパーシヴァルを見つめる。そして目の前に立つ50歳程の男に目を向ける。

男は灰色の司祭服のような出で立ち。白髪交じりの美しい銀髪を首の後ろで結い、そのまま背中の中ほどまで伸ばしている。瞳も髪と同じく銀色。整えた顎鬚からはその紳士さがうかがえた。

「……そう簡単にいくと思うか?」

 ランスロットの突然の問いに男は不敵に笑い、答える。

「えぇ、勿論」

 ランスロットも不敵に笑うと右手を細剣の柄に手をかけて抜き身の構えをとる。

 男も杖を構える。

「そうか、ならいくぞ!!」



――同日・ベクツール村――

 朝、ロゼイアは知らない家で目を覚ます。ロゼイアは起き上がって部屋の中を見回すと自分の寝ていた布団とは別に2つ布団が折り畳まれていた。

「ここは、いったい…」

 そう呟いた矢先扉が開く音がする。警戒するロゼイアだったが扉の奥から出てきたのは見知った人物だった。

「起きたみたいだな」

 ガラハッドの姿に安堵し、ふう、と息を吐くとうん、と軽く頷く。

「昨晩、あまりにも遅いから村の人が探しに来てくれたみたいでな。ここはフリジットさんの家だよ。安心していい」

「そっか…あ、そうだ、リヴァイアサンはどうなったの?」

「覚えていないのか?」

「え?うん……」

「そうか、だったらケイも呼んでくるよ。昨晩何があったか説明したい」



「なるほど、そんなことがあったのですね」

「あぁ、俺にも何が起きたのか。本当に体に異変はないのか?」

「うん。どちらかというと、暖かい?安心する?そんな感じがする」

胸に手を当て静かにそう答えるロゼイア。それを見たケイとガラハッドは安心した様に頷きあう。

ちょうど話を終えた頃、部屋の扉がノックされる。外からはフリジットの声が聞こえたために中へ入ってくることを促す。

 部屋の中へ入ってきたフリジットは片手に今回の報酬を、もう一方の手には丸めた羊皮紙ようひしを持っていた。

「これが今回の報酬じゃ。それとこっちはさっき君たち宛に風書が届いてのう。ランスロットからじゃ。中身は見ておらんから安心せい」

「ありがとうございます」

「礼を言うのはこっちじゃよ。余談じゃが男も昨晩湖の畔で見つかってのう。発見された時こそ意識も呼吸も……つまり死んだ状態じゃった。しかし今朝その男は目を覚ました。何事もなかったようにの。医者に診てもらったが健康上の以上はないそうじゃ。教会でも診てもらったが男のものでない魔力の残滓ざんしが感じられるだけでそのほかの異常はないそうじゃ」

「そうか。何もないならよかった。後で教会の方にも…それはいいか。ケイ、手紙にはなんて?」

「読み上げますね。【昨晩の件はお疲れだったな。急な話だがベクツール村から北西へ進んだ先にある町コロセウムにて黒い炎を扱う怪しき者あり。との報告を受けた。至急調査に向かってくれ。俺も傷が癒え次第向かう】だそうです」

 ケイは読み上げた手紙をガラハッドに渡す。ガラハッドも一通り目を通すとロゼイアに渡す。ガラハッドに倣い目を通し、

「どうするの?」

「2人がいいならすぐにでも」

 ガラハッドはそういいつつも実のところロゼイアの身を案じていた。昨日あれほどの力を見せ悪魔との契約をした。結局のところリヴァイアサンを倒したあの力の正体も分かっていない。その反動が出ないか心配なのである。

「僕なら大丈夫だから」

 そう言って微笑むロゼイアを見て安堵する。

「それじゃあフリジットさん、馬車を用意してくれるか?」

 それを聞いたフリジットはふふっと笑いながら首を横に振ると

「そういうことなら荷馬車を使うといい。ちょうどコロセウムまで行く荷馬車があったはずじゃ。まぁ、直通ではない故時間はかかるじゃろう。それが嫌ならちゃんと馬車を手配するが?恩義もあるしのう」

「いいや、十分だ。それじゃあ2人とも準備ができ次第すぐに家を出るぞ」



 数分後、荷馬車がフリジット宅前に到着する。

「それじゃあ、フリジットさん。また」

「あぁ。また何かあったら頼むよ。ないにこした事はないがの」

 そういって大きく笑うフリジットを背に荷馬車は出発する。

「村長からも聞いてると思うがこの先は村を幾つか転々としていくから到着は5日後の朝の予定している。長旅の警護よろしく頼むよ。ま、悪魔なんてそうそうでやしないがな!!」

 出発早々馬の手綱を引く商人の男が威勢よく笑う。久方ぶりに走る荷馬車、その横を子供が競争するように走ってきたりもしていた、その時だった。ロゼイアは何かを耳にする。

「かつて、世を闇が覆わんとした……」

「これって…」

「ヴィクトリア伝記の黄金の少年ですね」

「小さい頃、よく育ての親が聞かせてくれた…」

「奇遇だな。俺も小さいころよくアーサー王に聞かされていたよ」

「実話とも、寓話ぐうわ御伽噺おとぎばなしともいわれている世界的にも有名なお話ですからね」

 ケイからそう聞かされるとロゼイアは少し身を乗り出して声の聞こえた方を見るとそこには教会が、そして教会の前でシスターが子供たちに語り掛けているのが見えた。

「何度世界が闇に覆われそうになろうとその度に現れて闇を払う黄金の少年か」

「闇を払う、黄金の少年……」

 ロゼイアは前に向き直り一言だけそう呟いた。

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