第104話 長男の妊娠
長男の妊娠が発覚した時は、ちょうど私は船の仕事を退職して専門学校入学直前でした。
だ、大丈夫なんやろうか? 入学辞めたほうがいいかな? と心配になり専門学校の先生に聞いてみましたら、
「在学中に出産される方、ゴロゴロいますから大丈夫ですよ」
との返事。
社会人の方が半分はいる専門学校。そうですよね。まあ、そうなりますよね。
と安心して入学しました。
横浜にマンションを借り、ほとんど一人暮らしのような生活を始めました。(主人は船ですから)
昼間働くつもりだったので、夜間部のほうに入学してしまった私。
2年目からは、保育所の都合もあり昼間の部へ移させていただきましたが。
さて、長男を妊娠した私。初めての妊娠です。
二人目、三人目とは大違い。めちゃくちゃ気を使いました。
助産師さんからもらった資料通りに、毎日、寝る前にストレッチをして。
一日三十品目のバランスの取れた食事食べて。
塩分には気を付けて、練り物製品や漬物は一切食べず、ヨーグルトを毎日摂取してました。
もともと味付けの薄い関西人の私ですが、さらに薄くするようにして。
一人暮らしなものですから、だんだん舌がそれに慣れてしまい、さらにさらに薄くなってしまい、主人が下船した時、「味が全くないんだけど」と言われ、醤油をぶっかけて食べてもらったり。(船の食事は味付けが濃いめ。主人の仕事場のエンジンルームは暑く、汗をかくから)
ここで一言。
妊娠中に推奨される食事のモデルを見ますとね。
一見、量が多いように見えますが、アレ、どう考えてもダイエット食ですよ。
一日に摂るたんぱく質の目安。
肉、魚、約60~80グラム。卵、一個。大豆製品、豆腐半丁ぐらい。
ご飯は初期は一杯。中期以降には少し増やしますけど。
あとは、毎日片手一杯の緑黄色野菜と両手一杯の淡色野菜と、適度なフルーツを摂れ、ということです。
どう考えても普段の食事のほうがたんぱく質もっと摂ってますでしょう? 肉なんて100グラム以上、食べてるに決まってます。
そりゃあ、その通りにしていたら太るはずないわ! 出産まで、体重は子供と羊水、血液、胎盤の約5キロしか増えないわ!
そういうわけでして、長男のときの私は妊娠中5キロしか増えませんでした。生む直前の健診で、体重を測った助産師さんに、きゃあ! すごいすごい! と興奮されるぐらい褒められたり。
えへへ。頑張りました。
まあ、主人が普段いなくて一人暮らしの融通がきいたのと(そりゃ、ほかに家族がいるご家庭だと、だれかが買ってきたお菓子が目のつくところに置いてあったり、ご飯は多目につくるから余りものを食べないといけなかったり、他の家族のためにたまには豪華なメニューを出したりしないといけませんからね)長男の時には食べつわりがたった二週間で終わったおかげもありますね。
でも、もっと気を抜いてもよかったかも、と今になって思います。
長男の時は中期から貧血気味で鉄剤を飲んでいました。二人目、三人目の時よりもこまめにレバー食べて、バランスの良い食事してたはずなんですけどね。
二人目、三人目のときは貧血は一切、なし。
もっと気楽でよかったかな、と反省する点がもう一つ。
それは真夏の冷房について。
家族も、学校の先生も、周囲の人も、妊婦は冷やすな、冷やすな、と私に連発しますんで。
それなら、冷房使わずに夏を乗り切ったるわい、とヘンに意地をはって決意した私。
南向きのカンカン照りの風通しの悪いマンションの最上階、常時気温33~34度の中、扇風機と麦茶と頻繁な水浴びで夏を乗り切った妊娠後期の私。ただでさえ、体の内側から二人分の体温がほかほかとにじみ出るこの時期なのに!
(熱中症になる方を心配しろ!)
いや、今思うと怖いです。よく母子ともに死ななかったと。あんな怖いこともう二度としません。
一度、信じられないくらいの熱帯夜には、全裸で寝ちゃった。
考えれば、このくそ暑い日本の夏、アホほど冷房をきかせなきゃ冷えるなんてことはないのです!
なんであんなに我慢してたんだろう。根性を使うところが間違ってます。
おなかの長男も暑かったんでしょうね。買い物に行って冷房の効いたスーパーに入ったとたん、元気に胎動をし始めたり。ごめんなさい。長男には悪いことしました。
冷房ガンガン利かせて、冬の靴下履くなり、布団しっかり被って寝たほうがよほど、身体的にも精神的にも良かったよ!
だから皆さん、夏の妊婦さんに冷やすな、なんて酷なこと、簡単に言わないでくださいね!
長男が生まれて横浜にいた四年間もそんな夏の生活を続けましたもので。(体が暑さに慣れた)
長男は汗腺機能が最大限に発達し、超汗かきです。それはよかったかな。今、体温調節ができない子が増えていると聞きましたし。この子、将来、熱帯に行っても生きていけるんじゃないの?(ちなみに長男が赤ちゃんの時以外は、冬もあまり暖房を使いませんでした。実家に比べれば、まるで春のような横浜のマンションの部屋。息が白くないんですもの。余裕でしょう)
それにしても暑い国の妊婦さんて、どうやってこの苦痛を乗り切ってらっしゃるのでしょう。インドとか。気温50度とか、どんな感じ?
普段から暑い国にいれば、そういう強い身体になっているのかな。
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