第12話 おさわり
私の船時代の話を続けます。
職場の上司に、Kさん、という方がいました。天パでガリガリの体型で背中が曲がっておりました。
定年も間近で、おじさん、というよりはおじいちゃん、という感じです。
私はこのKさんにとても可愛がっていただきました。ありがたく思っております。
しかし。
このKさんというのが。
かなりのさわり魔でして。
通りすがりに女の子ならだれでもお尻をぺろん、と触るのです。
朝など、おはようの挨拶がわりにぺろん、ぺろん、ぺろん。
きゃー、という声が聞こえたら、ああKさんが出勤したんだな、と。
ところが、これ。
お尻だけだと思うべからず。
時には、前(・)にも手を出してきますからね!
Kさんとペアで棚卸しをしたときです。
Kさんは品数を数えるのに背中をこちらに向けていました。私は数を書くために表に集中しておりました。
……「キャベツ、○玉……」と言いながら手を後ろにいる私の股間に向けて伸ばしてきますからね!
背中に目でもついているのかと思うほどです。
油断も隙もあったものじゃないです。
そんな困ったKさんでしたが、とても照れ屋さんでした。
触ったあとは、赤くなるのです。
目をしぱしぱさせて、
「触っちゃった」
と。
耳まで真っ赤に。
ーー赤くなるなら、触らなきゃいいじゃん!
と、思うのですが。
こんなKさんは、女の子たちから、
『もうー、全くKさんは』
という感じでなんとなく許されているうらやましいキャラクターでありました。
ーーでも、これ船だったから良かったものの、陸上だったらとっくにクビになっているんじゃないですかね?
そんなKさんの行動に堪忍袋の緒が切れた先輩がいました。
以前書いた十万円の彼女こと、A先輩です。
我らがA先輩は、Kさんにある復讐を思いつきました。
ーーある朝、いつものように出勤したKさん。
ぺろん、ぺろんと挨拶がわりに女の子を次々におさわりしていました。
A先輩の前まで来たKさんは、習慣でA先輩の股間に手を伸ばしました。
そのとたん、
「……は、はぅうあわわああ……」
本当にそんな声をあげて、Kさんは尻もちをつくほど驚きました。
なぜなら、そこには。
昨日までなかった立派な逸物(・・)が……!
なんてことはありません。
我らがA先輩が、丸めたタオルを股間に突っ込んでおいたのです。
ーー腰が抜けるほど驚いたKさんは、よほど懲りたのか、それ以来、前をおさわりすることはありませんでした。
相変わらずお尻をぺろん、という行為は変わりませんでしたけれども。
それは定年まで続きましたけどね!
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