第11話 舟幽霊
ちょうどいい季節なので、ヒヤッとする話を。
船には、幽霊さんが存在します。
幽霊さんは水場を好むと聞きますし、閉鎖空間の船は彼らにとって、とても居心地のいい場所なのでしょう。
特に客船、フェリーなら乗船中に何らかの事情で亡くなる方も多く、幽霊さんも多いと思います。
乗組員の一室にそういう部屋がありました。
真下の階の部屋が、亡くなられた方の客室だったそうで。
その部屋に入った乗組員は、不思議な体験をすることで有名でした。
なんだか人の気配を感じるとか、テレビが勝手についたりだとか、窓の近くを誰かが通ったので、誰かな、と見ると誰もいないとか。
私も、その部屋に入ったことがあります。
生まれて初めて、金縛りにあいました。
しかも、二回。
そのために、遅刻しました。
仕事場にも幽霊さんは居ました。
レストランの調理場です。(私は調理員でした)
昔、突然死したアルバイトの方が居たらしく、夜、調理場に行くとよく見ると評判でした。
さて、客室乗務員の中に、北国出身、霊感美少女がおりました。
お婆さんがイタコさんだそうです。
彼女に聞くと、こういう答えが返ってきました。
「ええ。たまに昼間からウロウロしてますよ。無視してますけどね」
昼間でもいるんだ! ウロウロしてるんだ!
「この前、すごい忙しかったときにね。私、ここで一生懸命に皿を拭いてたら、す、と隣に来て……『手伝うよ』って」
やさしい!! いい人なんだ!
--彼は、彼女にいわせるとウロウロしてるだけで害のない人なんだそうです。それでも、目を合わさないようにして無視してると彼女は言ってました。
もう一つ。
船で私が嫌な場所がありました。
乗組員区画の下の階から上の階へと続く階段です。
踊り場に、冷蔵庫が置いてありました。
調理員の私の部屋は下の階で、客室乗務員の同期は上の階の部屋でしたので、夜に同期の部屋に遊びに行くために、階段をよく上りました。
いつも階段を上るたびに、なんとなくイヤな感じがしたのを覚えています。
ある夜のことです。
階段を上っていると、階段の踊り場の冷蔵庫の扉が勝手に開きました。
きちんと閉まってなかったのかな、と見ておりますと、扉はまた勝手にひとりでに閉まりました。
……そのとき、海はシケておりませんでした。
……ええ、船は揺れておりませんでしたとも!
私は気持ち悪くなって、自分の部屋に戻りました。
次の日、そのことをみんなに話すと、私もあの階段がなんだか気持ち悪くて……、と告白する人が続出。
早速、霊感美少女に聞いてみました。
「ええ、あそこはタチの悪い女の人が居ますよ。……気をつけた方がいいですよ」
--コワッ……‼︎
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます