第10話 虐待コールセンター
数年前の話になります。
よくお泊まり会をしていたママ友のU子ちゃんの家に子供を連れて遊びに行きました。
私の長男と同級生の男の子(T君)がいるU子ちゃんは、二人目の子を宿していて臨月に入っておりました。
二人で遊ぶ息子たちの横で、お菓子とお茶を出してくれたU子ちゃんが告白しました。
「実はこのあいだ、虐待してると思われて、相談員の人が来てさあ」
「ええーっ⁈」
私はびっくり。
でも、話を聞いてああそれは仕方ないかも、と納得しました。
※ ※ ※ ※ ※ ※
「……いたあい。……いたあい。……(泣き声)」
「いたいよう。……来ないで」
「ママ、来ないで!……来ないで!(絶叫)」
……声だけ聞いてると、虐待だと思いますよね?
実際は、こうです。
「(ウンチがしたいよう。ウンチが硬くて)いたあい。……(お尻の穴が)いたあい。……(泣き声)」
「いたいよう。(あ、ママ。ウンチしてるところ見ないで)……来ないで」
「ママ、来ないで!(恥ずかしいから見ないでよう)……来ないで!(絶叫)」
……そういう訳なのです。
便秘症のT君は、便意をもよおすと、カチコチの便が直腸を刺激して、それはそれは悲痛な泣き声をあげるのです。
そして、カーテンの影や玄関に行って隠れて泣きながらウンチをします。
誰かが近づこうものなら、見られるのが恥ずかしいので、大声で拒否します。
お泊まり会した時にそういうT君を見ていた私は納得しました。
ーー濡れ衣だけど、ドキドキしながら相談員の人にお茶とお菓子出したよ、とU子ちゃんは笑いながら言いました。
相談員の方も、お母さん、お腹が大きいのにごめんなさいね、と優しく話を聞いて下さったそうです。
まあ、笑い話で終わったわけですが、U子ちゃんはこう言いました。
「びっくりしたけど、子供のことを気にかけてくれているんだな、ありがたいな、と思った」
そうなのです。
何もなかったらなかったで、ああ良かったな、で済むこと。
間違いだったらどうしよう、と心配して通報を躊躇っている方も中にはおられるかもしれませんが、濡れ衣だったとしても怒らないのがまっとうな親の反応ではないでしょうか。
U子ちゃんのように、自分の子供のことを気にかけてくれていてありがたいな、と思うのが、通常ではないでしょうか。
(まあ、そうでない人もおられるとは思いますが。)
とりあえず、びっくりするとは思いますけどね。
ですので、少しでも虐待を疑われた方は、即刻ホットラインに連絡していただければいいな、と思います。
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