番外編『プラトニック・ラヴ・リリィ』

運命の出会い

「真凛さま!ごきげんよう!」


少女たちが色めき立ちながら、挨拶をする。


「あら、ごきげんよう。」


優しく微笑むのは、学園一のお嬢様であり、美貌の"東雲しののめ真凛まりん"。誰もが羨み、見惚れずにはいられない。そんな彼女も、少女たちを愛しく思っていた。


そう、彼女は性癖の持ち主だったから。


◇◆◇◆◇◆◇


「……ちょっと、あの方。さんじゃなくて?」


少女たちがひそひそと話す声が聞こえる。あまり良い空気ではない。


「本当……。なんであんながさつな方がうちにいるのかしらね。」


「風紀が乱れてしまいますわ。」


この花園を乱す存在なのかしらと、真凛は少女たちの視線の先を見据える。


……その人を目にした瞬間、真凛の世界は彼女しか映らなくなった。


凛々しい顔立ちの同じ制服を纏った女性。確かに、女の園には似つかわしくない仕草。どちらかと言えば、男性的な風貌。けれど、真凛には眩しいくらい素敵に見えた。


(早乙女……何さんと仰るのかしら?)


真凛の心臓は早鐘を打つように高鳴った。……"早乙女"と呼ばれた女性に恋をしたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る