試される理論武装
このおじさんが、この国の"最高権力者"…。
フェルナンドくんは、この威圧感を感じながら今まで生きてきたんだ。
挨拶しかしてこない国民。
埋められた井戸。
抑圧されている確固たる証拠だ。
多分、猪突猛進なマサチカの方が可愛いと思えるくらい。
生半可な理論武装じゃ、平行線になってしまう。
問題は、この"王様"に誰も逆らえない時点で不利なのは明白だ。
…いざとなったら、誰も味方がいない。
「…中々に面白い発想をする娘よ。
だが、そなたの"言葉"は理想を語っているだけだ。
理想など、現実の前では意味を成さない。
私の"言葉"は現実を見据えたものであり、誰よりも……『正しい』のだ。」
うわー、予測通り過ぎて気持ち悪い。
でも、穴みーっけ☆
「へぇ、この国ではおじさんが一番頭いいんだね。
戦争の戦いかたとか、全部おじさんが決めたの?」
"ほしい言葉"以外受け付けないんだよ、こーゆータイプって。
「当たり前だ。他のものは私のために、確実な事実説明が出来るのが好ましい。
しかし、我が国の戦術は、代々受け継がれたもののみしか許されない。
それ以上の戦術はなく、常に完全無欠であるからだ。」
あーあ、自分で言っちゃったよ。
余計なことを言うな、自分が必要としていることだけ伝えろってさ。
てかさ?この戦術ってなんだろね?
負け知らずっぽい空気醸してるけど、代々ってヤバくね?
あ、フェルナンドくんと目があった。
青ざめながら困った顔をしてる。
おじさんにわからないように、ボクに苦笑いを見せた。
多分、今フェルナンドくんが出来る精一杯だろう。
「まぁ、おじさんは機転の利く人ではありそうだね。
戦術は代々ってゆーけど、アレンジとかしてるの?
全く同じだったら………"この国に未来はない"よ。」
空気が凍りつくのがわかる。
フェルナンドくんはボクを見て、肩を落とした。
…とっくにフェルナンドくんは気がついてたみたいだね。
「…小娘!我が国の完璧なる戦術が使い物にならないと申すか!?」
…否定的な言葉があると逆上して、飛躍する。
何なの?このテンプレおっさん。
「毎回同じ戦いかただったら、相手だって対抗策考えて、いづれ本当に使い物にならなくなる可能性があるでしょうよ!
新しいものに頼らない姿勢はカッコいいと思うけど、全ては適材適所ってやつなんだってば!」
…面倒臭いなぁ。
「…何を言うかと思えば。ふん、フェルナンド。
娘に優しく説明してやれ。我が国の鉄壁の策をな。」
うわー、バカにされたよ。腹立つなー。
しかも、バラしちゃうとかとんだ自信家だねー。
「…はい、父上。」
フェルナンドくんが困った顔のまま、ボクに向き直る。
可哀想だな、フェルナンドくん。
「カリン、策と言うのはね?我が国には『フラワーマジック』という魔法があるんだ。」
「まぁ、花園の国だから想定範囲内だよ。」
「うん、それでね?敵が現れたら『フラワーマジック』で惑わすんだ。
花びらを大量に舞わせ、視覚と嗅覚を奪う。
二つを奪えば、自ずと他機能も混乱するわけなんだよ。」
メダ◯ニダンス的なやつかな?
「混乱に乗じて、死角をつく策なんだ。」
「………………。」
「どうした、娘。完璧な策に言葉も出ないか。
はっはっはっはっ!出現場所を特定する器官が混乱している状態では、打つ手はあるまい!」
…フェルナンドくん、何で君のお父さんがこの人なんだろうね?可哀想だよ、君が。
「…ねぇ、フェルナンドくん?」
後ろでおじさんが無視されて、イライラしているのがわかったけど知らん顔しよう。
「な、なんだい?」
フェルナンドくんには真正面で悪いね。
「成功率はどれくらいかな?分かりやすく、お爺さんの代とかひいお爺さんの代とか、比較出来る感じで。」
チラリとおじさんを再度見る。
意図が分かっているから、酷だろうね。
「…この策を始めたのが、父上のひいお祖父様の代。その頃は100%だったらしい。
父上のお祖父様の代で90%くらいで、父上の父上、私のお祖父様の代で70%前後…。」
頑張ってくれ、予想は出来てるから。
「………現在は、40%。」
あちゃー、ここまで予想の範疇内だと恐ろしいな。
「…おじさんさ、完璧とかは追及しないよ。
でもさ、ボクが言いたいこと…わかるよね?」
声のトーンを落としたボクに静まり反る。
「…………。」
おじさんも流石に顔を反らした。
予想してろよ…。
「言わないならいってあげるよ。
このまま譲ったら、フェルナンドくんがいい迷惑だね。
おじさんの意地で、フェルナンドくんの、"ウェルガーデン"の未来無くなるね。」
誰も何も言わない。
…何なんだよ、返せよ!ボクの理論武装タイム!
……その瞬間、堰を切ったような笑い声が城内を震わせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます