番外編『ゆーまんは思春期真っ盛り』

…立ちはだかる壁は、あまりにもでかい。


誰が信じる?あの華凛が名門の進学高校に通っているなんて。

中学に上がるときも苦労した。

アイツと同じ学校に通うために。


だってそうだろ?

いつでもどこでも、アイツは"井戸"を熱く語る。

ちびの頃から全く変わらない、大胆不敵な性格。

フォロー出来るのは、ずっと一緒にいる俺しかいない。

なのに、毎回大丈夫大丈夫って笑ってる。

俺の知らない二年、アイツがどんな学校生活を送っているかもわからない。


今回も心配でならなかった。

アイツの高校生活、どうなっているんだろう。

中学の頃と変わらず、"一人"でいる。

一切語ろうとしない。

聞いても、何もないって。

いつも眠そうにギリギリ登校。

それは、深夜アニメを見てから寝るからだろう。

リアルタイムがいいんだっていつも言い訳する。


でも、それは嘘じゃないだろうけど何か隠している気がした。


変わらず、井戸を探しているアイツ。

でもなんだろう…。

"別の何か"も探しているような。

聞く勇気もなく、いつもと同じやり取り。


「おい!華凛!また、井戸探しかよ?」


振り返るアイツはキラキラ嬉しそうに。


「当たり前田のクラッカーさ!ゆーまん!」


おまえはいくつだよ!ってツッコミたくなる。

……それが俺には、心地好かった。





……さて俺の今の問題は、受験だ。

アイツは何気なく、進学している。

それが、俺には難しい。

別に頭が悪いわけでもない。

アイツが良すぎるだけ。

近隣の学校の中でも、ハイレベルの学校を無意識に選ぶ。

その中で毎回、ランキング一位の快挙を達成し続けている。

そんなヤツの近くにいるなら、自ずと無茶もしなくちゃならない。

流石に、二年の10月にある推薦は無理だった。

この夏までに内定をもらうくらいじゃないと、ダメだ。

でも、アイツにバレちゃいけない。


「ゆーまん、高校どこいくのー?」


「あー…、どうしようなー。」


毎回誤魔化すのが大変だ。

だけど、多分アイツは分かってる。

敢えて知らないふりをして、合格発表の日に一緒に喜んでくれるんだ。


アイツだって人間だ。

色々あるだろう。

言いたいことはハッキリ言うけど、空気は読めたりする。


…もしかしたら、ただ俺が、少しでもくるくる変わるアイツの表情を守りたいだけなのかもな。

誰が何と言おうと、アイツは"女の子"なんだから。

男よりカッコいいアイツのフォローをこれからもしたいだけなんだよ。

きっとそう、それ以上は………ないさ。



……ただ、アイツを一人にしたくないだけなんだって。

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