第26話「ちょっぴり外伝 お姉ちゃんは妹が大好き」


茜が小学生の頃、メイは赤ん坊だった。仕事で帰りが遅い両親に代わり、茜は必死で世話をした。ミルクをあげたり、おむつを取り替えたり、託児所に預けて学校に行き、帰りに迎えに行くことも日常茶飯事。だが、メイは姉がいなくなると、すぐにぐずりだす癖があった。しかも鳴き声が半端なく、他の赤ん坊の泣き方より酷かったという。誰があやしてもぐずり、面倒を見きれないと託児所から断わられることが何度もあった。おかげで妹を抱っこ紐で背中に背負い、学校で面倒を見たこともある。




メイが小学生になると「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と甘え出すようになる。茜はメイが可愛くて仕方なく、いつも一緒にいた。メイはとても素直で姉の言うことはなんでも聞いて実行していった。ただ、自分というものがなく、大人しいので意見を言うのが苦手だった。そのせいか友達作りも下手で親しい友達もいなかった。姉はそれを少し危惧していたが、おいそれと注意するのも難しいので、様子を伺うにとどめた。




メイは知らないが、実は男子生徒の間ではなかなか評判がよく、男女問わず普通に接してくれるということで人気が上がり、中には告白しようと勇気を出す男児もいたそうだ。だが、そんな情報はすぐに茜の元に入り、男児を諦めさせるように裏工作したらしい。




中学では理沙と仲良くなり、二人はいつも一緒に放課後で食べる歩きツアーを行っていた。あまり友達がいなかったメイは理沙に懐いており、家にもよく遊びに来ていた。三人で食事をしたことも何度かあるし、お泊りもあった。




しかし、この異世界で理沙はメイを一人の女性として好きなことが発覚した。これは頭が痛い問題である。嫁に出すのも嫌だが、女に嫁に出す……というのは世間では難しい話だ。そこら辺はナイトゼナでも事情は同じで、やはり偏見で見られることもあると聞く。




「神様、メイが幸せになりますように……」




そして、それとは別にやることがある。そちらも片付けなければならない問題だ。それでも姉は妹の幸せを祈っていた。


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