第15話ある悟り

 ぼくが白紙の前で止まっていたり、なんのストーリー性も発揮できないで埋もれてしまうのもたぶんあきらめが優っているせいだと思う。ぼくは人生を肯定的に見れないのだ。すべては幻想のようにしか思えない。建物は軟体動物のようにグニャグニャしながら震えている。僕の窓から見えるフレームひとつとっても、蠢く動物が支配している。それは単に増築されたからかわってしまったに過ぎないのに、僕の頭はそれにゆいてゆけないのだ。ぼくはただ自分を痛めつけたりすることで、なんとか現実感覚を保っている。ぼくの最大の逃げ場は、もはや自殺しか残されていない。とはいえ自殺することに意義を持たせるつもりなどもうとうないのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る