第14話人

人間の断面、人間の悲喜劇。文学的表現。そんなものがぼくにはうっとましい。ここに表現することなんて、ほんと言えば何もないのだ。これは自分でも驚くばかりだ。何かを誰かに伝えるってことがどれほど困難なことか。というより、ぼくはとっくに諦めてしまった。といってなぜ諦めたのか、と聞かれても答えようがない。誰も彼も自分の声を聞こいうともしない。耳を閉ざして通過して行っている。自分をおざなりにして、目の前に迫ってくるちっぽけな現実の前でなんとか取り繕っている。それが全ての生の根元なのだ。

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