第4話完璧な空想2.

ホテルのボーイは机や椅子を運んでいる。せめてもの救いは、彼らがぼくのことを宿泊者とでも思っていることだ。とにかく、ぼくに机や椅子をぶつけることなく動きまわっている。とはいっても、邪魔なヤツだという視線だけは、はっきり彼らの目の玉に写っていた。ぼくはただ突っ立ったまま、何処に行って良いものやら不安で、辺りをキョロキョロするばかり。

 ぼくの摩りきれたジーンズとさらさらの洗い立てのTシャツは、このまま突っ立っていたら、ゴミ箱にでも捨てられてしまいそうだ。ぼくは早く会場に着きすぎたのだ。3時間前にはホテルのロビーにたどり着いていた。ぼくの名と授賞式の時間がはっきりと、掲示板に貼り出されていた。

 ぼくはそれを見てホッとして、会場を探しにかかったのだ。ぼくうはホテルのフロントで、掲示板を指して、授賞式の会場を尋ねた。フロントの女性は、南館です、といった。ぼくはそうですか、といってから歩き出した。ところがどこに行っても会場など見当たらなかった。早く来すぎたので、そうなっても仕方がなかったが、そんなことなど念頭にない。とくかくぼくにとって会場を知ることが第一の目的なのだ。

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