エピローグ
「西村先生」
「ああ、高橋先生。また学園長が騒ぎを起こしたようですな」
「申し訳ありません。学園長は生徒たちの暴走を言い訳にしていますが……」
「あの人も困ったものだ。仕事が増えてかなわん」
「後処理が大変だったようで……」
「そこらじゅうで校風に相応しくない行為に及ぼうとしていた生徒がいましたので、全員しょっぴいて下校させたところです」
「ご迷惑をおかけします」
「なんの。どうせ吉井か坂本が一枚噛んでいるのでしょう。私の監督責任でもあります」
「今回は、まあそれほどでも」
「多少は迷惑をおかけしたみたいですな……」
「まあ、はい。……ですが今度のようなことがあると、学園長も『アレ』に呼ばれてしまいかねませんね」
「ああ。査も……おっと、今は禁句でしたな。召喚フィールドがまだ消えていない」
「……」
「どうしました、高橋先生?」
「いえ、別に。……ところで『アレ』の正式名称ってどういうものでしたっけ」
「……」
「……」
「忘れるとは高橋先生らしくないですな、はっはっは」
「ほんの度忘れです。なんと言いましたっけ」
「……」
「……」
「何を考えていらっしゃるので?」
「いえ、本当にただの度忘れなんですよ。聴聞会ではなく、諮問会ではなく、査……ここまで出かかっているのですが」
「そうですな」
「答えを知っているなら教えてください」
「……」
「……」
「なぜその三文字を言わせようと?」
「いえ、別に」
「高橋先生、今ちょっと、惜しい、みたいな顔をしませんでしたかな?」
「私はいつもこんな顔ですが」
「そうですか」
「で、『アレ』の名称ですが」
「高橋先生? 今は禁句の三文字です」
「惜しい」
「今はっきりと――」
「なんでもありません。ああ西村先生、この三文字は何て読むのです」
「ひらがな三つで――それも禁句ですな。高橋先生?」
「惜しい」
「高橋先生?」
「高橋先生?」
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