第5話
息を吸う、呼吸止めて踏ん張り機体を旋回させる。
「まだ着いてきてる」
「くそっ振りきれない」
さらに出力をあげる。
「出力80%」
「小蝿は」
「まだ後ろ」
エンジンはまだまた余裕に回る、被弾はまだしていない。何度か射線に入り込んでしまうが、無駄弾を撃たせるだけで終わる。
「小蝿更に1匹」
「捻るぞ」
「了解」
左に機体を傾け、旋回、その上で出力を落とし斜め上に上がるように捻りを加える。
「出力40%」
「パワー」
そうすることで、敵を前に進ませ、自分達は後ろに回り込める。今回はうまく言った。目の前に小蝿が2匹。水平に戻しながらそれを狙うために出力を。
耳が音を拾う、出力をあげようとした手を逆に下げる。
「右から敵」
「わかってる」
出力をほぼゼロに、そうすることでプロペラは回らなくなり機体は真下に落ちる。
「ストール」
「立て直す」
「了解、エンジン再始動」
止まりかけたプロペラがまた動く、だが飛ぶためには速度が必要だ。
<追い込み助かる>
追い込んでいた2匹の小蝿は誰かに倒される。それはどうでもいい。海面が近くなる。
「回転数規定値突破」
操縦幹を引き、機体を持ち上げる。
「うおおぉぉっ」
機体をなんとか立て直す。
「敵後退開始の模様」
<敵後退中、追撃せよ、追撃せよ>
今日もまた生き残れたようだ。
◆◆◆◆◆◆
アークウィングに戻り、機体から降りる、回りには何一つ傷がついて機体が多数。
「新入りがきてるって」
「それでか」
「02574」
それを横目に自室に戻ろうとしたのだが止められる。
「「はっ」」
「敬礼はいい、めんどくさいだろうが新入りの案内を頼む」
「「了解」」
「お前たちが1番おかしくなってないからな、ここで待って案内しろよ、じゃああとはよろしく頼む」
と言うわけで待機任務に移る、先程の作戦で疲れた体を癒したいのだが仕方ない。だが少しでも体を休めようと目を閉じる。
体感時間で10分ほどだろうか足音と話し声が聞こえたので目を開ける。整備士に連れられてきたのは100近い数の新兵だ。
「あとはよろしく頼む」
そう整備士に頼まれると彼はそそくさと離れていく、彼の仕事はまだ終わっていないのにこれを頼まれたのだろう正直めんどくさそうだった。と言うかめんどくさいのはこっちもなのだが命令だから仕方ない。
「02574だ」
「おおっ獣人とエルフだ」
「本当だ、すごい本当に異世界に来たんだ」
これが彼らとの出会いだった。
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