第四十九話:それは、大樹の強さのごとく

「わずか……一歩を踏み出す勇気……」

 老爺の言葉に潜み持った心の奥底を深々と抉られ、若き藩主はその表情を固めながら改めて熱気のこもる舞台上へと視点を移した。

 彼の目線が注がれたその場所では、野獣のごときふたりの巨漢が自らの戦いをなお継続すべく、いままさに対峙し直そうとしているところであった。

 ともに疲労困憊。

 ともに満身創痍。

 踏み出すたびに揺れる足取り。

 呼吸とともに乱上下する両肩。

 その有様を端から見る限り、双方ともとても仕合を続けられる様子には見えなかった。

 到底、戦いを続けられる容態には見えなかった。

 だが、それでも彼らは退かなかった。

 途切れた流れ、与えられた仕切り直しの時間を振り向くためには利用せず、おのれが前へ進むための準備期間として活用した。

 この期に及んで、どちらも守勢に立つ気などさらさらない。

 いきり立つ彼らの気が、見る者すべてにそのことを知らしめていた。

 攻勢。

 攻勢。

 攻勢。

 ひたすらに、がむしゃらに、ただただ全力で攻勢あるのみ。

 この時、ふたりの脳内を占めていたものは、そうした押さえきれない激情の二文字だけだった。

 観衆が固唾を呑んで見守るなか、示し合わせたようにふたりの呼吸が整った。

 魂の波長が同調し、膨れあがって爆発する。

 獅子と虎との轟吼が舞台中央で激突した。

 肉体が音を立ててぶつかり合ったのは、その直後のことだ。

 先手を取ったのは頭白のほうだった。

 速く、重く、間断なく放たれる各種の打撃が仕合の主導権イニシアチブを瞬く間に奪い取る。

 雄叫びと歯軋りとが舞台中央で交錯し、血飛沫が風に乗って宙に舞った。

 おのれの内で確かな何かを激しく燃焼させながら、白髪の僧侶は雄々しく吼える。

 吼えながら思う。

 そして告げた。

 思いの丈を技に乗せ、おのが胸中をまっすぐ告げた。

 古橋殿。

 それがしは出し切りましたぞ。

 おのれが持てる技、持てる業のすべてを!

 これほど嬉しいことはない。

 これほど喜ばしいことはない。

 武人として、芸者として、この身に棲まわせたもの、その真髄のことごとくを解放し得る機会を持つは、およそ何事にも例えきれない歓喜にござる。

 されど、そこもとのほうはどうなのでござろう。

 そこもとの技、そこもとの業、そこもとの「ぷろれす」とやらの真髄を、いまこの場にて出し切られたのでござるか?

 それがし相手に出し切られたのでござるか?

 いや、そうではありますまい。

 それがしにはわかり申す。

 古橋殿。

 そこもとはまだ持っておられるのでしょう?

 出し切っていない何物かを、その身に残しておられるのでしょう?

 だからこそ、葵殿の声に応えて立ち上がってこられたのでしょう?

 なればこそ、この頭白はそれが見たい。

 そこもとのそこもとたる真の部分を、ぜひともこの目で拝見したい。

 燃え尽きておられぬそこもとの芯の焔を、なんとしてでも目の当たりとしたい。

 そうでなくてはこの仕合、いささか不公平に過ぎるというものではござりませぬか!

 舞台上で繰り広げられるその光景は、まさに序盤戦の再現となった。

 攻める頭白。

 守るケンタ。

 武芸者は強さを誇示し、プロレスラーはその勢いに耐久する。

 どちらの力が上か。

 どちらがより相手の攻撃に耐えられるか。

 否応なしに続く流れを連想させられ、のめり込む観衆の目が期待に輝く。

 守りから攻めへの一気転換。

 先だってケンタが見せたあの劇的な仕合の推移に、そのイマジネーションをかき立てられてならなかったからだ。

 あの男古橋ケンタは、いつどのようにして切り返しに動くのか。

 いかなる手段をもって相手柳生蝶之進から主導権を奪い返し、果敢な攻勢へと転ずるのか。

 だが、当のケンタが見せた次なる行動は、そんな衆目の予想をこれ以上なく裏切るものに相違なかった。

 なんということだろう。

 彼は襲いかかる頭白の攻撃に対して、あろうことか防御の構えをすべて解き、それらを真っ向から受け止めるかのごとき態度を示したのである。

 両腕を小さく開き、やや腰を落としがちに仁王立ちするケンタ。

 避けない。

 避けない。

 凶器と化した四肢の肉迫をいっさい避けない。

 最低限の急所すら守らず、おのれ自身を敵の攻撃にさらけ出す。

 頭白の放つあらゆる加撃が、立て続けにその体幹部へと突入した。

 肉を討つ生々しい音が、断続して辺り一面に響き渡る。

 まさに一方的な陵辱としか表現しようのないその展開。

 その有様を直視した者たちは皆一様に我が目を疑い、「この男は勝負を捨てたのか?」と、その表情に戸惑いの色さえ浮かべてみせた。

 改めて評すまでもなく、それはおよそ常人には理解不能な暴挙であった。

 観衆たちの困惑も至極当然のことだと言える。

 葵も、鼓太郎も、光圀ですらもそうだったのだから、古橋ケンタの為人ひととなりをまったく知らぬ者たちであれば、それはもうなおさらのことであったに違いない。

 対戦の当事者である頭白でさえ、当初はその例外でなどいられなかった。

 痛烈な侮蔑と憤慨に彩られた感情が、その胸腔にて炸裂する。

 古橋殿!

 何故、おのれが勝利する道をここで放棄なさるのです。

 何故、それがしとそこもとが築き上げてきた闘争の軌跡を、この期に及んで空しきものとなさるのです。

 その行いは、それがしにとってこの上なき侮辱。

 そこもとは、この頭白が差し出された勝利を唯々諾々と承り、あまつさえそれを喜ぶ男であるとでも思うたのでござるか?

 しかし彼は、刹那の刻も経たぬ間にそれが決定的な誤解であったことを悟らされた。

 拳に、肘に、膝に、臑に、打たれ、撃たれ、討たれ続ける巨漢ケンタの両目がなお屈することなく阿修羅の鯨波ときをあげ続けているという慄然たる現実を、しかとその眼にしたがゆえだ。

 ケンタの湛えるその鋭利な眼光に力強く胸板を貫通された瞬間、この白髪の僧侶の背筋を身震いするほどの衝撃が稲妻のように走り抜けた。

 違う!

 おのれの誤断を歯噛みしながら、その心中にて頭白は叫ぶ。

 違う!

 違う!

 違う!

 私は見誤っていた。

 この古橋ケンタという仁を完全に見誤っていた。

 この仁は、もとより一歩たりとも退く気など持ち合わせておられぬ。

 いやそれどころか、おのれが守勢に立っているなどという意識すらこれぽっちも有しておられぬ。

 この仁は、攻めているのだ!

 攻撃せめているのだ!

 蹂躙せめているのだ!

 何をどのようにしてかは知らぬ。

 されどこの仁は、自らの「受け」によりこちら側の「攻め」を打倒し、明らかに我を正面から破砕せんと試みているのだ。

 策を弄するでもなく、罠を仕掛けるでもなく、ただひたすらに純粋に、そんなおのれのわがままを貫徹せんと目論んでいるのだ。

 なんということだ。

 頭白は思わず戦慄した。

 突如として、気圧されているおのれ自身を自覚する。

 当てずして相手に勝つ。

 傷付けることなく敵に敗北を認めさせる。

 数多ある武術の一派にはそんな不可解な作法が存在しているという事実を、彼は知識としてだけ持っていた。

 剣術の型稽古にも近い、「寸止め」という名を持つその作法。

 それは、圧倒的な技量差を示すことで対戦者の抗戦意欲そのものを減衰させるという、いわば心理戦のいち手段であるとも評し得るものだ。

 だがいま目前にてケンタの演じているそのさまは、そんな一部の伝統芸などとはとても同一視できない代物だった。

 勝つために求められるべきさまざまな法理が、そのどこにも感じられないからである。

 にもかかわらず、頭白は思った。

 休むことなく手を出し続けながら、あからさまな当惑の色を溢れさせながら、白髪の僧侶は自問する。

 おのれ目がけて吹き付けるこの気迫の量はいったいなんだ、と。

 攻めているこちらのほうがともすれば押し返されそうになるこの圧力は、いったいどこから生じているというのだ、と。

 古橋殿──彼は眼前の対戦者に向け語りかける。

 そこもとは、それがしにいったい何を見せようとしておるのでござるか?

 御身のすべてを斯様に差し出し、それがしにいったい何を知らしめようとしておるのでござるか?

 そんな疑問が彼の脳裏をよぎるのと、そのまぶたの裏に鮮烈な過去のひとこまが蘇るのとは、ほとんどその機を同じくしていた。

 その背景となったものは、屹立するケンタの姿と重なり合うようにして浮かび上がる、神々しいまでの桜の大樹であった。

 樹齢数百年に及ぶであろう見事なまでの山桜。

 幹の太さは大人が両腕で抱え込めないほどもあり、大きく四方に広げられたその枝々には、淡く色めく無数の花びらがいままさに満開の彩りを添えていた。

 頭白はその木に見覚えがあった。

 それは、間違いなく彼が少年時代を過ごした家、その裏山の峰に君臨していた主のごとき老木であった。

 その艶やかな大樹の根元では、いまだ少年の域を脱していないおのれ──柳生蝶之進が敬愛する父・連也斎とともに立ち、爽やかな春の微風を堪能している。

 修行を終えて、ちょうどひと休みを取っている矢先の光景なのであろうか。

 そんなおりの出来事だった。

 不意に連也斎が腰の刀を閃かせ、目の前に降ってきた一枚の花びらをその切っ先で両断した。

 真ん中からふたつに別れた花びらが、風に吹かれて宙に舞う。

「蝶之進」

 抜き放ったままの差し料をおもむろに愛息の眼前へと突き出し、この剣術史に名を残す稀代の剣豪は、なんとも優しげな微笑みを湛えつつゆるりと告げた。

「我らが学ぶ『強さ』とは、いわばこの刀のようなものだ。

 選別された玉鋼を幾度も幾度も火に通し、それを鍛え、折り重ね、そして丹念に研ぎ、磨き上げたすえ、ようやくひと振りの刀として世に生まれる。その課程において不純なるものをひとつ残らず取り除くことで、初めて『的を斬る』というただひとつの意義を果たし得る存在として完成を見る。

 そうやって生み出された『強さ』というものには、もはや疑うべき余地がない。我らはそれを知っている。ひと振りを鍛えた刀鍛冶として、そしてその手によって鍛えられた一本の抜き身として、我らはその『強さ』というものを知っている。

 そのことは、蝶之進、そなたにも十分わかっていることだろうと思う」

 だが、と逆接の言葉を挟んで連也斎は続けた。

「だが、その『強さ』を示すため、刀は何物かを斬らねばならぬ。いや、何物かを斬らねば、その『強さ』を衆目に知らしめることができぬと言える。

 それは我らとて同じこと。

 我ら武芸者は、何者かと戦わねば、その『強さ』を証明することができぬ。何者かを打ち倒さねば、その『強さ』を知らしめることができぬ。

 それは武の道を征く、武の道を志す者にとってはおよそ避けようもない絶対の真実。決して目を背けてはならない、阿修羅のまことにほかならぬ」

 唐突に父の語り出した内容を、蝶之進少年は無言のままに聞いていた。その表情には否定的な色合いなど微塵もない。

 揺るぎない敬意とともにおのれを見上げる息子の顔をなんとも好ましげに眺めながら、連也斎はおもむろに話の筋を切り替えた。

 おのが愛刀を鞘に収め、自分たちの頭上に影を落とす桜の大樹へ向き直る。彼は言った。

「蝶之進。そなた、この桜の木が弱き者に見えるか?」

 「見えません」と即答する息子に向け、彼は「何故か?」と短く尋ねた。

「この桜の木は、我らのように何者かを討つことはできぬ。その枝を用いておのが力を証明することも叶わねば、根を抜き、動き、進んで力を求めることも望み得ぬ。にもかかわらず、そなたにはこれが『弱き者』とは見えぬというのか? この大樹は、決してそなたとは争えず、ゆえにそなたを打ち倒すこともまたあり得ぬというのに」

 蝶之進は父親の問いかけに応えることができなかった。

 難しい表情を浮かべたまま、考え込むような沈黙を維持し続けるだけだ。

 そんな彼の反応を見て、不意に連也斎は破顔した。

 もとよりまっとうな回答など求めていなかったのであろう。

 自らの口で、望んだ答えを紡ぎ出していく。

「蝶之進。これこそが『大樹の強さ』だ」

「『大樹の強さ』……でありますか」

「そうだ」

 彼は言った。

「自ら敵を討つことのできぬ、自ら敵を倒すことのできぬ大樹がそれでもなお万人の目に力強く映るのは、これら年期を経た大樹が、今日まで少しも揺らぐことなく自らの生をまっとうしてきたからだ。激しい風雪に耐えながらおのが年輪を積み重ね、太く、高く、おのれ自身というものを形作ってきたからだ。

 蝶之進。『強さ』というものは、この世に唯一無二の正解を持つものではない。見方によってそれぞれに相応しい『強さ』というものがあり、互いのそれは、また別のそれを否定し得る存在ではない。

 戦うて勝てぬから『弱い』

 抗うて及ばぬから『弱い』

 左様矮小な志は、いまこの時をもって捨てよ。

 勝ったから『強い』のではない。

 及んだから『強い』のでもない。

 それはただ物事の結果に過ぎず、その行いの本質を表したものなどではないからだ。

 戦いに挑むこと。困難に抗うこと。時としてひとは、その決断そのものに『強さ』というものを見出すことがある。その結末がたとえ『強さ』というものを示さずとも、その行い自体が見る者知る者の心震わすことがあるということをおぼえておくがいい。

 そして、蝶之進。

 これより先、もしそなたが道に迷うようなことあれば、その時は決して『刀の強さ』のみを目指すような男にはなるな。『大樹の強さ』を求めるような男となれ」

 そんな父・連也斎の言葉が胸腔に溢れかえってきた瞬間、頭白の精神はいわば性的な絶頂感にも似た興奮でもって埋め尽くされた。

 ケンタの肉体におのれの拳足を打ち込みながら、彼は思い出の父の姿へ問いかける。

 父上。

 これが、いま目の前にあるこれが、まさしくそうなのでございますか?

 いまこの御仁古橋ケンタの見せているこれこそが、過日、父上の仰った「大樹の強さ」というものなのでございますか?

 そうなのですな。

 そうなのでありますな。

 古橋殿は、我が敬愛すべき敵手殿は、こうすることで屈せぬおのれを、怯まぬおのれを、この私を討つことなく見る者すべてに知らしめようとしておられるのですな。

 それをもっておのが知る「強さ」というものを、葵殿に、鼓太郎に、そして自らの背に負ったすべての者たちに等しく伝え教えようとしておられるのですな。

 次の刹那、熱い何かが頭白の喉奥を間欠泉のように駆け上ってきた。

 口腔から吹き出さんとするそれを必死になって耐えしのぎ、白髪の僧侶は心の中で絶叫する。

 それは、彼がこの戦いを通じて救わんとしている、守らんとしている幼き子供たちへの偽りなき本心、謝罪の言葉にほかならなかった。

 ゆき、はな、大治郎。

 許せ。

 この頭白、戦いの場で、戦う相手に憧れた!

 頭白の右拳がケンタの顔面にねじ込まれたのは、次の刹那の出来事だった。

 常人なればそのまま卒倒しかねないほどの衝撃を受け、ケンタの上体が弾かれたように後ろへ仰け反る。

 ただし、その一撃は断じて相手を倒すための一撃ではなかった。

 敵意や殺意はおろか、闘志ですら微塵も込められていない、ただ漠然と相手を殴るためだけの一撃だった。

 それらの感情に代わって彼の拳に宿っていたもの、それは誰の目にも明らかな敬愛の情であった。

 尊崇すべき好敵手に対する、混じり気のない羨望と畏敬。

 頭白は文字どおり自身が抱いた純粋なる想いを、いまおのが拳をもってケンタの肉体に刻み込もうと画策したのである。

 その不器用に過ぎる感傷が、この時、対戦者の心根に響いたかどうかは定かでなかった。

 されど、この拳撃が退くことを知らぬ大男に対し、はっきりとした何かを感じ取らせたという事実だけは、もはや疑念の挟みようのない真実だった。

 激しく血と汗とをしぶかせながら海老反ったケンタの双眸が、衝撃で揺れる前髪の下からじろりと頭白を指向する。

 それは諦めというものを頭から拒絶した、紛うことなき不屈不当の眼差しだった。

 潮目が変わった。

 主導権が移動する。

 思わずたたらを踏もうとする両足を強引にねじ伏せたケンタが、歯を食い縛りながらその上半身を引き戻した。

 勢いよく振り起きてきた分厚い胸板が頭白の眼前に肉薄する。

 太い両足が力強く床面を蹴り、筋肉で鎧われたプロレスラーの全身を機関車のごとく猛進させた。

 目一杯踏み込んだ足裏へと体重が乗り、その腰が竜巻のように回転する。

 周囲六十センチに及ぶ剛腕が、渾身の力でもって振り抜かれた。

 古橋ケンタの象徴とも言うべき鍛え抜かれた右腕が、正面の敵を制すべく雄叫びとともに放たれる。

 ラリアーット!

 押し寄せる怒濤が立木りゅうぼくをなぎ倒すように、それは白髪の僧侶に襲いかかった。

 真っ赤に滾った魂の奔流が、真っ向からその喉元を直撃する。

 頭白の長身がもんどり打って後ろへ倒れた。

 まともな受け身を取ることも叶わず、その肉体は音を立てて床面上に激突した。

 並の武芸者であれば、その一撃で意識を断たれていても不思議ではない。

 それは、見る者すべてに左様思わせるだけの説得力を有する強烈無比な一発だった。

 ケンタにとってそのラリアットは、持てる力のすべてを注いだ、文字どおり乾坤の一擲以外の何物でもなかった。

 言い換えるなら、およそ次善の策など考慮に入れない、半ば特攻にすら等しい攻勢転移であったとも言える。

 がむしゃらに振り抜かれたおのが右腕に引きずられるかのごとく、ケンタは数歩前進したところで崩れるように片膝を付いた。

 我が身に残された余力という余力を、この一瞬をものにするため根こそぎ使い果たしてしまったからだ。

 呼吸が乱れ、心臓が早鐘を打ち、ぐるぐると回る視界が彼の平衡感覚を一時的に奪い取っていた。

 猛烈な吐き気と不快な耳鳴りとが一向に止まない。

 直前までその身に受け続けた乱打によって、身体の内部が悲鳴を上げていたのであった。

 それは、戦場に立つ者としては何があっても回避したい、無防備極まるひと時だった。

 熟練した専門家の目には、この死に体を生み出した破れかぶれな反撃が、あるいは軽挙妄動の誹りを免れない愚かな行為に映ったかもしれない。

 完全無欠に非合理だったその防御姿勢と、完全無欠に非合理だったその攻撃姿勢。

 それは、およそ格闘技の本質を知らぬ素人の所行のようにさえ感じられたかもしれない。

 格闘競技というものは、決して運に任せたギャンブルなどであってはならない。

 もとより人体破壊の方程式たる格闘技には、合理的な計算に基づいたもの以外のなんたるかを持ち込むべきではないのだ、と。

 だがそんな起死回生の大勝負を挑んだ張本人は、自らの決断がもたらすかもしれないネガティブな可能性など微塵も考慮してはいなかった。

 むしろ楽天的なほど前向きに、ポジティブに、おのれの一切合切をそれにベットしていたと言っていい。

 何故か?

 無論、この時のケンタに第三者視点で冷静な判断を下すだけの余裕がなかったこともその大きな一因ではあったろう。

 されど実際にその異様なまでの楽観を支えていたものは、彼の心理に深く刻み込まれた頭白ライバルに対する絶対的な信頼感にほかならなかった。

 そう、直前におのが顔面へと打ち込まれた頭白の拳。

 プロレスラー・古橋ケンタは、その痛烈な一撃に込められていた熱い想いを、寸分も誤解することなく全身全霊をもって受け止めていたのだ。

 そこに存在していたものは、断じて理屈などという小賢しい何物かではなかった。

 戦う男同士にしかわからぬであろう、道理に合わない感情の共振。

 それは、当事者であっても説明しかねる嘘偽りない無言の交流だった。

 圧倒的なまでに濃密な、雄弁すぎる心の会話だった。

 いかがなされた、古橋殿。

 やや挑発的に聞こえる頭白の声が、ケンタの耳奥深くで木霊する。

 そこもとの「攻め」とやらはそこまでか?

 いまこの時は紛れもなくそこもとが手番でありますのに、ここでひと息を入れるとはなんとも大層な余裕ではありませぬか。

 残念ながら、この頭白の肉体はいまだ健在でございますぞ。

 早う、そこもとが「力」をそれがしにお見せ下され。

 早う、そこもとが「真髄」をそれがしにお見せ下され。

 言うまでもなく、それはケンタの脳髄が作り出した幻の声にほかならなかった。

 しかし彼は、どういうわけかその偽りの発言が真実と大きく乖離するものではないと確信していた。

 どこにも拠り所がないにもかかわらず、何故かその戯言こそがまことであると心の底から信じていた。

 その盲信は、いかにも自分の側にだけ聞こえのいい、まさしく典型的な独りよがりに相違なかった。

 にもかかわらず、ケンタはそんなおのれの正しさを少しも疑ったりなどしていなかった。

 この者にとっておとこ同士の理想の戦いとは、対面する敵の撃破のみを目的とした無味乾燥な力の行使などではなかった。

 彼がそれを、おのれと相手の持っているすべてのものを余さず使ってぶつけ合う、そんな一種の共同作業であるのだと頑なに信奉して止まなかったからだった。

 頭白さんも、俺と同じ思いを持っていてくれた。

 ケンタは改めておのれの所見を噛み締めた。

 だからこそ、その思想わがままに通じるものを持っていてくれたからこそ、いまあのひとは俺の情熱を真っ向から受け止めてくれた。

 こんな俺の身勝手な哲学に付き合い、「プロレス」という名の見知らぬ舞台へ自ら足を踏み込んできてくれた。

 感激に近い情動が、ケンタの背筋を電光石火に走り抜けた。

 その子供じみた心持ちが、精力の枯渇しつつあった彼の肉体に改めて新鮮な燃料を投入していく。

 負けられない!

 からからに干からびた雑巾からなお一滴の水分を絞り出すようにして、巨漢は激しく自分自身を鞭打った。

 断じて負けられない!

 負けるわけにはいかない!

 ここでおのれに屈したままその思いに背くなんてこと、断じて許されるわけがない!

 プロレスラーにとって仕合での負け、ルール上での負けは恥なんかじゃない。

 それは単に自分の実力が足りなかっただけの話で、恥ずかしいと思うようなことじゃない。

 実力が足りないなら、改めてそれを積み重ねればいいだけの話だ。

 たっぷりと汗を流して、改めて自分を鍛えあげればいいだけの話だ。

 今度こそ納得のいく結果を得るために、改めて自分を追い込んでいけばいいだけの話だ。

 でも、約束を破ることは恥だ。

 プロレスラーとして自分に課せられた誓約をこっちの都合で違えることは、もう絶対的な恥なんだ。

 プロレスラーの仕事ってのは、ただ単にリングの上で戦ってみせることじゃない。

 プロレスラーの仕事は、ファンの前であるものすべてを使い切ってみせることだ。

 あるものすべてを使い切ってみせる、そうファンと交わした約束をその場で忠実に守ってみせることだ。

 だからこそ、プロレスラーは簡単に負けを認めるわけにはいかない。

 あがいて、あがいて、これ以上なくあがききったすえに無理矢理押し付けられた負け以外は、その手の中に入れちゃいけない。

 そう、俺は「プロレスラー」だ。

 たとえ誰がなんと言おうとも、この俺は「プロレスラー」以外の何者でもないんだ!

 プロレスラーであるがゆえ、この俺にはその約束を果たす義務がある。

 ひとりのプロレスラーとして、その約束に自ら殉じる責任がある。

 だから俺は、プロレスラー・古橋ケンタは、葵さんと、鼓太郎と、おみつさんと、茂助さんと、そしていま頭白さんと交わしたこの約束を精一杯果たさなくちゃならない。

 この背に負ったみんなの想いを、自分から反故にすることはできない。

 その想いに応えるため、この身に宿したありとあらゆるものすべてを、この場で残らず使い切ってみせなくちゃならないんだ!

「うおおーっ!」

 左の拳を力の限りに握り締め、ケンタは天をあおいで咆吼した。

 それは、ほかの誰かに聞かせるための発声では決してなかった。

 ただおのれのなかの内なる者へのみ放たれた、奮起を促すためだけの号令。

 まさに、そうした表現こそが相応しい叫喚であった。

 脳内麻薬が溢れんばかりに分泌され、肉体が容易く限界領域を突破した。

 精神の力が、すでに底を突いていたはずの貯蔵庫から無理矢理に活動源力を引っ張り出す。

 血管が脈動し、筋肉が震えた。

 力を失っていたケンタの膝が力強く伸び、その巨体が闇雲な再起動を完了する。

 そうして勢いよく立ち上がったプロレスラーの向かった先は、しかしその対戦者である頭白のもとではなかった。

 ケンタは仰向けに横たわる白髪の僧侶に背を向けて、あろうことか足早に舞台の角へと駆け寄ったのだ。

 そして、脇目も振らず、その場に立てられている支柱の上へとよじ登り始める。

 観衆たちは、彼がいまいったい何を試みようとしているのか、それを理解することができずにいた。

 無数の素朴な疑問符が、雨後の竹の子のように至るところで立ち上がる。

 だが、その答えは刹那ののちに明らかとなった。

 衆目が見守るなか支柱の最上部へと到達したケンタは、そこからいっさいの間を置かず、舞台中央に向け背中から大きくその身を踊らせたのである。

 ムーンサルトプレス!

 躊躇することなく高々と跳躍したケンタの長身が、後方に向け転回しながら舞台上空で見事なまでの弧を描いた。

 遠心力で加速された肉叢ししむらが、横臥したままの対戦者目がけて猛禽のごとく襲いかかる。

 三十貫目約百キログラム強を上回るプロレスラーの肉体が、まっしぐらに頭白の上へ落下したのだ。

 逃げ場のない彼の身体は直上から降ってきた筋肉の塊によって押し潰され、有り余る目方をまともに受け止めたその肺腑が一時的な機能停止に陥った。

 空中殺法。

 およそ格闘技とは言えない、格闘技としては認められないその技術。

 しかし同時にそれは、見た者すべてを魅了する、そんな一種独特の美しさと存在感とを併せ持っている存在でもあった。

 確かにそれは「武」ではなかった。

 「武」の技ではなかった。

 目の前の敵を打倒し、おのが足下へ跪かせるための技ではなかった。

 気力・体力ともに健在で、それゆえに激しく防御するであろう目標に対して用いることのできないその技術。

 そんな代物のいったいどこに実戦的な利用価値があるというのだろうか?

 それは、少しでも武芸をかじった者にとってはあたりまえの現実だった。

 その現実だけは、いかなる者であっても否定することはできなかった。

 にもかかわらず、いまケンタが披露したその技には、多くの人々を芯から納得させ得るだけの説得力が含まれていた。

 多くの人々に思わず息を呑ませるだけの官能性が包まれていた。

 そうした事実を誰もが認めざるを得なかった。

 そうした現実を誰もが受け入れざるを得なかった。

 そしてそれを立証するかのごとく、この時、観衆たちはひとり残らず舞台上の流れにその目を奪われてしまっていた。

 皆が皆、感情を面に出すことも忘れ、ただ一心不乱にふたりのおとこ、その戦いの行方に没頭してしまっていた。

 数多の熱視線が注がれるさなか、おのが肉体それ自体をもって文字どおり敵手頭白圧殺プレスしたケンタは、間髪入れず相手の五体を海老に固めた。

 丸太のような両腕が、がっちりと白髪の僧侶を組み伏せる。

 頭白の両肩が麻布の上に押し付けられたのは、次の刹那の出来事だ。

 それを確認した審判ボブサプが大声で数を数え出す。

 葵が、鼓太郎が、おみつが、茂助が、祈るような表情で見守るなか、黒人戦士の野太い声が辺り一面に響き渡った。


 ひとつ!

 ふたつ!

 みっつ!


 半ば永劫の刻のごとく感じられる三秒間。

 しかしボブサプの口はこの瞬間、確かに──確かに三つ目の数を宣告した。

 勝利を告げる三つ目の数カウント・スリーを!

「勝負あり!」

 ぴんと背筋を伸ばした黒人戦士が朗々たる口振りで判決を下す。

「古橋ケンタ殿の勝ちにて候!」

 それより完全に一拍を置いたのち、爆発的な歓声がこの場のすべてを支配した。

 おのれの勝利をうまく消化しきれないまま呆然と座り込むケンタの頭上に、割れんばかりの喝采が滝のように降り注いだ。

 葵や鼓太郎を初めとするケンタの身内は言うに及ばず、常に沈着であることを求められている選りすぐりの高山藩士たちでさえもが、いまや興奮気味に拳を握り、惜しむことなく勝者の健闘を称えていた。

 敵味方を問わず、正々堂々戦った者へと送られる純粋なまでの賞賛の気持ち。

 その感情は、ある種の動物的本能に相違なかった。

 人間という種が生まれつき備えている、根源からの衝動だと言うこともできた。

 平穏な時の流れが忘れさせた、熱き生命の滾りだとさえ評し得た。

 光圀はそのなんとも不可思議な光景をいと満足げな表情で眺めつつ、大きく数度、こうべを頷かせてみせた。

 両の眼をまこと優しげに細めつつ、「天晴れ、天晴れ」と幾度も繰り返しその口腔で呟いてみせた。

「御老公」

 そんな老爺の傍らでひとりの若者がその唇を開いたのは、まさに左様なおりの出来事だった。

 その若者──飛騨高山藩主・金森出雲守頼時は茫然自失たる面持ちを浮かべたまま、上席に座する英明な水戸藩主に向け、おもむろにおのが言葉を口にし始めたのである。

「ひとは……諦めを踏破した時、空を飛ぶこともできるのですな……」

 彼は言った。ひと言ひと言に力を込め、絞り出すように自らの心中を声にした。

「私はこれまでの人生、いったい何をしておったのでござろうか……

 御老公。この頼時、いまこそ恥を忍んで告白いたしとうござる。

 いまを遡ること六年のむかし、私は、ひととして決して許されぬ大きな過ちを犯しました。私は、ひとりの罪なき女人を、心より愛した我が実の姉をあろうことかこの手で汚し、その者から愛すべき未来をことごとく奪い去ってしまったのでござる。

 私は前非を悔い、おのが愚行を恥じ入り申した。いまこの世に我と我が身があるのを悔やみ、ただひたすらに良き領主、我が民草に仕える第一のしもべとしてのみ生きる道をこの身に深く課し申した。

 そのことが……そのことだけが、この愚か者の示すたったひとつの償いであると頑なに信じていたからにござる」

 光圀の見ている前で、頼時はその双眸より大粒の涙をこぼし始めた。

 乾いた唇が小さくわななき、声の端々がぶるぶると震えだした。

 しかし、若者は語ることを止めなかった。

 まるでその行為がおのれの義務ででもあるかのごとく、蕩々と言葉を紡ぐを止めようとはしなかった。

 彼は告げた。

 ただただ告げた。

 あたかも傍らの老爺を耶蘇の司祭にでも見立てたように、おのれの赤心をおのれの意志で語り続けた。

「ですがいま、私はそのことが大いなる間違いであったことに気付き申した。

 私はおのれの罪業を言い訳に、ただ逃げ惑っていただけだったのでござる。明日というものに背を向けて、居心地の良い今日に居座り、過ぎ去った昨日の我が身を一方的に責め続けておっただけだったのでござる。

 そうすることで真のおのれと向き合うを忌避し、我と我が身の正当を必死になって言い繕おうとしておったのでござる。

 あの男古橋ケンタの戦いを目の当たりにし、私はそのことを悟り申した。

 何かを得、ここより先に進むためには、黙って座しておるだけでは駄目だ。そのためには自らの意志で痛みに耐え、痛みに立ち向かい、おのが両足で痛みを乗り越えなくてはならぬのだと、いまはっきりと悟り申した。

 そうしなくては、明日という日を掴むことはできぬ。明日という日を掴むことさえ叶わぬのに、どうして昨日の罪を償うことなどできましょうや。

 私はこの六年、手前勝手な感傷に酔い、独りよがりの義務感に身を任せることで、いまを生きるという本懐からこの目を背けておったのでござる……」

 頼時の口から嗚咽の声が漏れ始めたのは、まさにこの瞬間の出来事だった。

 仮にも一国の領主たる傑物が人目のある公の場所で斯様な感情をあらわにするなど、およそあってはならない事例であった。

 しかし、光圀はそれを咎めようとはしなかった。

 さながら自身の孫にでも語りかけるかのような口調で、「出雲殿。ようそのことに気付かれましたな」とこの若者を気遣うような素振りさえ見せた。

 その思いやりにいざなわれたものか、やや落ち着きを取り戻した頼時は、姿勢を整え、明らかに意識して引き締めた表情を光圀へと向けた。

 「御老公」と改めて切り出した彼の顔付きは、その時もう金森家の領袖としてのそれを明確に形作りつつあった。

 頼時は言った。

「御老公。此度の国替えの一件、御老公の御力をもって、何卒よしなに取り計らってはいただけまいか?」

 それは、国策の急激な方向転換にほかならなかった。

「私は、おのれの贖罪のためこの国飛騨国と運命をともにする旨を定めておりました。その決心の正しさに、微塵も疑いなど持っておりませんでした。

 されどそのこだわりこそが自らの両足を縛る鎖であったことに気付かされたいま、私はおのれのみそぎを果たすため、新たなる道へ足を踏み入れねばならぬと思うたのでござる。過去の過ちをそれに倍する功名でもって雪ぐため、私は痛みの待つ新しき道へ向かわねばならぬのだと思うたのでござる」

「しかと承りましたぞ!」

 そんな頼時の言葉に、これ以上もなくはっきりと光圀が応えた。

「出雲殿。すべてはこの光圀にお任せなされい。決して悪いようにはいたしませぬ」

「ありがたき御言葉」

 薄く笑って頼時は言った。

「これで残る気がかりは、我が金森家の未来のみとなり申した。余命少なきこの私に代わり間もなく当家の跡を継ぐであろう何者かが、願わくば末永く我が領民に善政を敷いてくれることを願うばかりにございます」

「出雲殿。そのように哀しきことは申されるな」

 どこか諦観漂う高山藩主の物言いに、天下の副将軍たる老人がたしなめるような声をあげた。

「出雲殿には、今後とも由緒正しき金森の家と新たな領地の民草を導いていっていただかねばならぬのですから」

 その唐突な発言に頼時の表情が一変した。

 「しかし御老公」と怪訝な色を浮かべながら、疑問の言葉を口にする。

「御覧のとおり、この身は篤き病に冒された身。我が命も、もはや残りわずかと聞いております。御老公のご期待に添えぬは痛恨の一事でござるが、これもまた天命と思うていただくよりほかに手は──」

「案じられますな、出雲殿」

 頼時からの狐疑を光圀はからからと笑い飛ばした。

「出雲殿を今日まで苦しめてきたその病。この光圀の懐には、それをたちどころに癒やす類い希な良薬がございます」

「良薬でございますと?」

「左様」

 大きく頷き老爺は言った。

「まさしく、いかな名医でも敵わぬ、これ以上なき良薬にございます」

「それはいったい──」

 不意打ちに近い激情が雷鳴にも似た勢いで辺り一面に轟いたのは、音を立てて開きかけた未来への扉に金森頼時がその指先を伸ばした、まさにその刹那の出来事だった。

「殿! なりません! なりませんぞ!」

 もはや怒号にすら近いその発言はふたりの藩主の会話を遮り、周囲の空気をびりびりと激震させる。

 次いでそれは命令口調の叱責となって、若き高山藩主へと一直線に叩き付けられた。

 不躾な発言者は、なおも感情的になって怒鳴り続ける。彼は言った。

「殿。左様な甘言に惑わされ、金森と飛騨高山が行く末を誤らせてはなりませぬ。このような口約束に過ぎぬあやふやな約定に従うことで、すでに敷かれた確かな道を外れるような羽目に陥るなど、藩主として断じてあってはならぬことですぞ!

 殿。いかに御老公の仰せとはいえ、左様な戯れ言などに耳を傾けてはなりませぬ。あのようなどこの誰とも知れぬ武芸者風情に、先代の血筋にあたる娘を渡してはなりませぬ。

 殿の余命あとわずかとなったいま、我が義娘むすめ・葵と殿が御養子との婚姻のみが金森本家と飛騨高山藩を救う唯一無二の方策でござる。よもや、我が殿はそのことをお忘れではありますまいな!」

 それは、飛騨高山藩城代家老・姉倉玄蕃守重平、そのひとの口から放たれた言葉であった。

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