第496話
現ラスター家当主の命の下、街の郊外には巨大な工房が次々と建設され、そこにはユロア、フリアの各地より厚遇を以って評判高き薬師達が集められており、彼らは薬の生産と新薬の研究に日夜取り組んでいるとのこと。
そうしてシルボラの工房より生み出される薬は、自身の街で消費されるだけでなく連邦諸国に輸出されており、彼らの薬は連邦の薬市場において日に日にその存在感を増しているという。
ユロアにおける薬の一大産地であるロマリアの名だたる薬師ギルドが生み出す商品に割って入るなど簡単に出来ることではない。
実際この大事業を成功させる為に大伯は多くの財と時を要しており、工房の建設や薬師集めだけでなく、シルボラ産の薬を仕入れることによるロマリア貴族や商人の反感を恐れる者達に対する事前の根回しだけでも十年、二十年という歳月をかけたという。
だがその苦労の介あってかこの大事業は無事軌道に乗ったといえる。
依然市場における大勢はロマリアの薬師達にあるものの、着実に彼らの市場を削りとっており、さらに十年、二十年と経てばその勢力差はますます縮まっていることだろう。
ロマリアの薬師達や彼らの後援者である貴族達にとってシルボラの街は今や黄金を吐き出す上客などではなく、手強い商売敵となっていたのだ。
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