第483話
咎められ消沈するマルフス。その様をファバが鼻で笑う。
「ざまぁみろ」
したり顔で言う少年だったが、彼に対してもレグスは注意を与える。
「ファバ、お前もだ。こんな調子でくだらない揉め事を起こすようならその場で置いていく」
「ちっ、わかってるよ……」
こうしてひと悶着ありながらも、マルフスはレグスの従者として旅の仲間に加わることとなった。
この小柄な壁の民は荒事には向かないが、育ての親と共に十年と灰の地で過ごしたその経験と知識は貴重かつ有用なモノである。
マルフスの助言を受けながらレグス達は作業を進め、あらたな旅の計画をその日のうちに完成させてしまう。
あとは壁の民達が物資の調達を終えるのを待つだけ、そう遠くない日にこの地を発つことができるだろう。
計画を練り終えた四人がそう思っていると、マルフスがおもむろに口を開いてレグスに問うた。
「ご主人様、本当にこの者達だけを連れて古き精霊の国を目指すつもりか」
「ああ、そうだ」
「古き精霊や鷹使いは役立つに違いない。だけどこんな小僧、何の役にも立たない。それどころか足をひっぱるだけだ」
「てめぇ……」
怒るファバを無視してマルフスは言葉を続ける。
「こんな小僧より魔術師を連れていくべきだ。壁の先には手強い魔物がたくさんいる、それを追い払う為にも、腕の良い魔術師が一人ぐらいはいた方がいい」
その意見をレグスはあっさりと退ける。
「必要ない。腕の良い魔術師など簡単に見つかるものではないし、この旅の目的を知ってなお付いて来る者となると尚更だ。探すだけ時間の無駄だ」
貴重な動植物や遺跡が眠る灰の地に興味を持つ魔術師は多くいる。
だが彼らには自身の伝手があり、腕の立つ魔術師となれば相応に力のある者達を集めることに苦労はしないだろう。
そんな者達がわざわざレグス達のような無名の小さな集団に加わるとは思えない。
けれども、マルフスには別の考えがあるようだった。
「この城にいる。ご主人様に役立つ魔術師がちょうどこの城に」
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