第482話

「たしかにね。まぁ灰色肌の従者を連れる東黄人ってだけで物珍しいでしょうけど……、それでも小さな壁の民を連れまわす王様よりかは遥かにマシだわ」

 古き精霊がそう言うと場の視線は自然とレグスへと集まった。

 彼が如何に判断するか、その答えを彼女達は待っていたのだ。

 寸刻の沈黙を経てレグスは小男に問う。

「できるか?」

「もちろん!! けれど、やっぱりあなたはマルフスの王だ。そのことは忘れないでくれ……」

 二人のやりとりを見てファバがからかうように言う。

「ってことはレグスの連れの俺達もファバ様にカム様、セセリナ様か。こいつはいいや」

「何を言っている? どうしてお前みたいな小僧にマルフスがそんな呼び方をしなくてはならない。お前達こそ、ご主人様を呼び捨てするなど言語道断だ」

 従者として主の対等な仲間である自分達にも敬意を示すべきだ、少年のその発想をマルフスは根本から否定した。

「これからはちゃんとマルフスと同じくご主人様とお呼びするのだ」

 そんな言い分をファバが承知するはずもない。

「はぁ?」

「『はぁ?』じゃない。言ったはずだ、この方は我らの王なのだと。分をわきまえろ小僧」

「んなこと知るかよ。てめぇこそ俺達の旅に後から乗っかろうって分際でごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ。俺にとってこいつはただのレグスだ。王様やご主人様なんかじゃねぇ」

「こいつ……、こいつ……、信じられない!! こんな無礼な小僧許しては駄目だ、我らが王よ!!」

 少年と小男の騒々しく見苦しい言い争いにセセリナとカムは呆れて閉口し、レグスは怒気を含んだ静かな口調で警告した。

「いい加減にしろマルフス。言ったはずだ、俺は王などになった覚えはないと。呼び名一つ他人に強要するような真似をするな」

「そんな!! マルフスはあなたの為に……!!」

「たとえお前が真の星読みであろうと、俺はお前を特別扱いするつもりはない。邪魔になると判断したら、荒野の真っ只中だろうと容赦なく切り捨てる。その事を忘れるな」

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