第484話

 小男の言葉にレグスは訝しみ目を細める。

「炎の娘を連れていくべきだ。彼女は必ずあなたの役に立つ」

「ベルティーナのことか」

「古き神々を呼び出せるほどの力が彼女にはある。それに彼女には壁の先で果たさねばならない役目がある」

 マルフスの言い様にレグスは直感した。

「なるほど……、お前の狙いはそれか」

 目の前の小男がベルティーナを連れていくようわざわざ進言する理由、それは彼女を単純に戦力として期待しているというよりも、果たさねばならない役目、それがあるからなのだろう。

 星読みが言う果たさねばならない役目とは、星告の使命に他ならないはず。

 そこまでを察して彼はマルフスに言う。

「だがお前が星の言葉を伝えたところであの女は動きはしまい。壁を越えるという事は、奴にとってもっとも重要な存在、主であるロブエル・ローガのもとを離れることを意味するのだからな」

「そんなことはない。マルフスなら必ず炎の娘をつれてこれる。あの女はご主人様のために果たさねばならない使命がある」

「結局、その果たさねばならない使命ってのは何なんだよ」

 ファバの問いにマルフスは言いよどむ。

「それは……」

 答えにつまる小男がその先を話すよりも早く、レグスは自身の結論を述べた。

「どのみち必要ない。あの女が持つ力はたしかに大きなモノだが……、強大すぎる。奴の心変わり一つで、あれは大火となり俺達を襲うことになるやもしれん。そんな者を連れて旅をすることはできない」

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