第462話

 ゴルゴーラはその言葉の意味を深く問おうとはしなかった。

 男が言わんとする事の全てを理解しきれたわけではない。

 ただ、男の強き意志のこもった瞳が語っていたのだ、それが最大限答え得るモノなのだと……。

「どうにも判断に困り、信じ難き話ばかりだな」

「信じようが信じまいがお前達の勝手だ。俺は壁を越える。ただそれだけの事」

「そうもいかん。すでにお前の耳にも入っているだろうが、我らの星読み、マルフスがお前を救世主と預言したのだ」

「あの男が何を言おうと俺には関係のないことだ。たとえそれが真の星読みの言葉であったとしても」

「星読みの神聖を訴え牢より救い出したお前が、その星読みを軽んずると?」

「あれは灰の地の情報を少しでも得る為の方便にすぎぬ」

「ではマルフスの預言が信じられぬと?」

「信じるも信じないもない。お前達の星読みが何を言おうと、俺は俺の望むことを為すだけだ」

「天意に背くか。為すべきことから目を背け、己が望むままに生きると言うか、レグスよ」

「為すべきことから目を背ける? お前達がそれを口にするか、壁の民よ」

「何が言いたい」

「為すべきことも為さず、こんなくだらぬ事に時間を潰しているのはいったいどこの誰だ」

 レグスの言葉に部屋の不穏さがいっそうと増す。

 されどその空気に躊躇することなく、彼は言い切った。

「星読みの言葉一つに縋り、救世主とやらを探しまわるのがお前達のすべき事だというのか? たいしたものだな、壁の守護者というものも」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る