第461話
その石の名を、壁の王たるゴルゴーラが知らぬはずはない。
彼は目を細めてレグスに問う。
「何のわけあって彼の秘石を追う。まさかお前も不滅の肉体を手にいれると? それとも狂王と同じように第六の大王を夢見るか?」
「くだらん。俺が求めるのは『終わり』だ」
「終わり?」
「かつて狂王ヌエが手にした選王石『ラグナレク』。彼の石を葬る、それが俺の目的。その為に俺は壁を越え、古き精霊の国を目指す」
レグスの宣言にゴルゴーラは頭に手を当て難しい顔をつくりながら、息をついた。
男の話を必死に整理するだけでも彼の脳は精一杯といった様であった。
「覚悟はしていたが、お前の口から飛び出すのは驚くべき事ばかりだな。とても理解が追いつかぬ。レグスよ、古き精霊の国が壁の先にあるとはどういう事だ。何の為に彼の石を葬るなどと言う」
「いにしえの天魔の戦いの後、古き精霊スティアは異界に逃れた。その異界へと繋がる扉が灰の地に眠っている。俺はその扉をくぐり、古き精霊の王に会う」
そこで言葉を区切る男に、回答を迫るようにゴルゴーラは再び問う。
「何の為に石を葬る」
「けじめだ」
「けじめ? 狂王の子として生まれた者の、か?」
レグスが真に狂王の子であるのかどうか、核心に切り込むような問いに周囲がざわつく。
されど問われた本人はまるで動揺もなしにそれを鼻で笑い、断言する。
「そんなものは関係ない」
「では何故」
「俺が俺であるためのけじめだ」
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