第459話
その名乗りに物足りなそうな顔を浮かべながら王は問う。
「レグスよ。西の地に住まう者達の多くは我らと違い家名なるものを持つという。まさかお前が特別ただのレグスというわけもあるまい」
「もはや俺には帰る家もなければ、名乗る家名もない」
「たとえ今のお前にその気がなくとも、一度刻まれた名を捨てさる事は出来ぬものだ。答えよレグス、お前が生まれ背負った家の名を」
それを名乗る事はレスグにとって己の出自を明らかにする事と同義。
その覚悟を持って彼はここに立っていた。
「ロカ」
レグスが家名を告げると場はまたもざわつく。そのざわつきには驚きと共に得心の念が混じっている。
それもそのはず、この審問以前よりローガ開拓団の老魔術師トーリが立てた推測を聞き及んでいた彼らにとって、これはまったく予期せぬ出来事というわけではなかったのだ。
「ロカ。ミドルフリアの東端の国『ロレンシア』の王家であるあのロカか?」
確認するように問う王の言葉をレグスは肯定する。
「然り、そのロカだ」
「ロレンシアの王家においてレグスの名を持つ者、我が知るはただ一人。蒼い花の女王の一人息子に生まれ、その母の手によって火刑に処された王太子。……それがお前であるというのか黒き剣の使い手、いや、レグスよ」
「そうだ」
「なにゆえ火刑に処されたはずの者がここに立つ」
「怪奇なる縁に救われて」
「その縁とは?」
「古き精霊と古き人の子」
「古き人の子?」
「賢者ガルドンモーラ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます