第458話

 王の問いにレグスは言う。

「お前達の審問を受ける前に言っておかねばならぬ事がある。壁の王よ、この場での話を外に漏らさぬと天上の神々に誓えるか。それが出来ぬというのなら、俺が答える事は何もない。踵を返しこの部屋を出るまでだ」

 眼前に座する王や武装した周囲の大男達にもまるで気後れすることなく断言するレグスに、元老院議員達はざわついた。

「陛下に向かってなんと不遜な物言いか」

「王の問いに答えるどころか、誓約を要求するとは……」

「あのような者が本当に我らの……」

「だがわざわざ守秘の誓いを要求するということは、奴も多少なりと我らの問いに答え、話す気があるということではないか?」

 動揺する彼らと違いゴルゴーラは静かにレグスを見つめていた。

 そしてゆっくりと厳威ある口調にて言葉を発する。

「壁の地に生きる者は軽薄な冗舌を嫌い、誠意ある沈黙を尊ぶ。黒き剣の使い手よ、お前の口より知り得た真実が我らにとって著しく害あるものでない限り、いたずらに口外にするような事はないと、神々にかけて誓おう」

 王の言葉を受けてレグスは言う。

「ならば俺も、それが我が身を害するものでないかぎり、誠意を以ってお前達の問いに答えよう、壁の民よ」

「よかろう。ではあらためて問う、黒き剣の使い手よ。汝の偽り無き名を答えよ」

「レグス、それが我が真名だ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る