第457話

 目的の部屋の前につくと近衛兵達は足を止めて命ずる。

「しばし待て」

 そして見張りに立つ同胞に対して彼らは目で合図を送り、主たる者に到着を知らせ入室の許可を得るように促した。

 レグスの目の前で扉が開閉し、一人の大男が中へと入っていく。

 そして束の間の後、扉は再び大きく開かれた。

「入れ」

 近衛兵達に連れられレグスは城主の間へと足を踏み入れた。

 この部屋を訪れるのは魔物達の急襲を受けたあの日以来、二度目となるが、あの時と違い、部屋の中に慌ただしい空気はない。代わりに奇妙な静けさが部屋を覆っていた。

 取り囲むように武装した大男達が立ち並ぶ中をレグスは臆する事なく歩を進めていく。

 そしてその足は、眼前に悠然と座す壁の民の王の前にて止まった。

 相対するレグスとゴルゴーラ。

 息苦しさを感じるほどの緊迫感が漂う中、座する者が先にその口を開く。

「西国よりこの壁の地を訪れし黒き剣の使い手よ。まずはそなたの名を聞こう。仮初めの名ではなく、真の名を」

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