第433話

「それにレグス。今はあの娘よりも、別の厄介事を心配する必要があるかもしれないわ」

 セセリナの含みある物言いにレグスは訝しげに目を細める。

「あなたが助けた壁の民がいたでしょ?」

「マルフスの事か」

「ええ。彼が処刑されそうになってた時、言っていた事を覚えてる?」

「ああ、おおよその事ならな」

「星々の王。それが見つかったと大騒ぎしているわ」

「星々の王……」

「なんでも、星に選ばれた救世主だそうよ。黒き預言に語られた大いなる破滅より人々を救う者だって」

 彼女の話を聞いてレグスが真っ先に思い浮かべた人物はベルティーナであった。

 絶望的な戦況をひっくり返し、勝利を決定付けたのは他ならぬ彼女である。

 星の預言に語られる危機が訪れるとすれば、神をも従えたあの力ほど頼もしく思えるモノもないだろう。

 しかし、それではセセリナの前言と辻褄が合わない。

 単なる言葉のあやのせいという可能性もあるが……。

「それが俺達に何の関係がある」

 疑問に思いながらレグスは目の前の精霊へと尋ねる。

 すると彼女は大きく息を吐き出すと、彼の顔を真っ直ぐと見つめて言った。

「マルフスの言う救世主様ってのが、あなただからよ、レグス」

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