第432話

「召喚者である娘が目覚めて送り帰したそうよ」

「ベルティーナか……。古き神の召喚とは、あの女もまったくとんでもない事をしでかすものだ。まさかあれだけの力を有していたとはな。奴の不興を買うような真似は控えるべきだったか」

「そう心配する事もないんじゃないかしら。今度の戦いでの彼女達の働きは大きかったわ。壁の民達も恩赦する方向で動いてるようだから、そうなればあの娘としても私達に構う理由もないでしょ」

「さぁどうかな。ずいぶんと高慢な女だからな。勝手をした人間を許せない、その私情の一心で害意を持ち続けても驚かん」

「考えすぎよ。こんなところで騒動を起こせば、せっかくの恩赦も台無しよ。そんな馬鹿な真似、いくら彼女だってしやしないわよ」

 ベルティーナにとって優先すべきはロブエル・ローガの身の安全だ。

 いくらあれだけの力に目覚めたといっても、まだ十分にその力を扱えきれてるとは言い難く、騒動を起こして壁の民と再度揉めれば、己の身だけならともかく主の無事を保障出来ないだろう。

 そのような状況で彼女が自分達をどうこうするとは精霊には思えない。

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