第427話

「ベルティーナ!!」

「おお、気がついたか」

 何度呼びかけても目覚める事の無かった娘が意識を取り戻すと、彼女の周囲に集まる者達は驚き、歓喜する。

 そんな者達を尻目にベルティーナはイファートの方を見て呟く。

「帰さないと……。あの子を皆のもとへ帰さないと……」

 そう言って立ち上がり、ふらふらと歩き出す姉を心配し、傍に駆け寄ろうとする妹のミルカであったが。

 それを鷲鼻の老魔術師は制止する。

「見ておれ……」

 ローガ開拓団の者達はトーリのその言に従い、ベルティーナの行動を見守った。

 そして彼らが息を呑む中、古き炎の神々を従える女王は言葉を紡ぐ。炎の巨神を呼び出した時と同じ、古き言葉の詠唱だった。

「おい、あれを見ろよ」

 ガドーが空を指差す。

 そこにはベルティーナの詠唱によって再び開く大穴があった。

 そしてその詠唱に応ずるように、イファートの霊体が赤い光の粒子となり、その穴の中へと昇っていく。

 そうしてそのまま、まるで消えるようにして慟哭する神は人々の前より去っていったのである。

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