第389話

「ありったけの矢を射掛けよ!!」

「魔力を惜しむな!! 最大火力の魔法を以って応戦せよ!!」

 当初、突如現れた巨大な炎の神を前にして、城外のダークエルフや魔物達は抵抗を試みた。

 果敢に攻撃を仕掛け、神を討たんとする者もいたし。

「障壁を張れ!!」

「盾をかまえろ!!」

 魔法の障壁を張り、大きな盾に身を隠して耐え凌ごうとする者もいた。

 それは大いなる存在に対する矮小な者達の必死の抵抗。

 そんな光景を城から見やりながらセセリナが言う。

「馬鹿な事を……。その程度の攻撃で神と呼ばれる者を倒せるはずがない。それにあの程度の障壁術では、竜をも焦がす大炎を止められるはずもない。ましてや、ただの矢だ盾だなど……」

 彼女の言う通りだった。

 城外の軍勢の必死の抵抗、そのどれもが無意味。悪あがきにもなりはしない。

 彼の神がその炎に燃ゆる両脚を踏み出せば、熱波が起こり、たちまちに足元の魔物共が燃え死んでいく。

 彼の神がその大火から成る両腕を振るえば、トロルやミノタウロスすらもいとも簡単にはね飛ばされた。

 そして、彼の神がその業火渦巻く巨躯を震わせば、火弾の雨が降り、空を舞う怪鳥達も燃え落ちていく。

 誰も抗えず、何も抗えず。

 神の業火の前に等しく全てが灰燼と化していく。

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