第377話
襲い掛かってくる敵を払いながら広い城内を走り抜け、四人は主がいるはずの部屋へと飛び入る。
しかしそこには既にロブエルの姿は無く、部屋の中は無人となっていた。
それもただの無人ではない。
部屋の中には血の臭いが充満し、一面が赤く染まっていたのだ。
いったいこの部屋でどのような惨劇が起きたのか、否応にも想像させられるその光景にベルティーナは声を震わす。
「何よ……、これ……」
妹のミルカは言葉すら失っていた。
「遅かったか……」
部屋に散る血肉が意味するものを想像し、神妙な口調で呟くグラスをベルティーナが睨む。
「遅かった? いったい何が遅かったっていうの?」
病的な興奮を滲ませたその口調は、グラスが言わんとする事を彼女が理解している証拠でもあった。
「ねぇ!!」
問いただそうと詰め寄る少女の足が部屋に落ちていた何かを蹴り飛ばす。
音を立てて転がったそれに、自然と四人の視線が向けられる。
そこには赤く染まった金属の物体が転がっていた。
「これは……」
ベルティーナが手にしたそれは、変形し潰れた指輪だった。
「嘘よ……」
彼女は絶句する。この潰れた指輪に覚えがあったからだ。
何年も前にミルカと二人で主ロブエルに送ったこの世に二つとない厄除けの指輪。
それが赤く血に染まり、無惨にも潰れ、破損している。
まるで持ち主の身に何が起きたかを暗示するかのように……。
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