第348話

 セセリナは慌てて、違和感を覚えた術式の部分を確認していく。

――やっぱりそうよ……。ずいぶんと性格悪い事してくれるじゃないの。

 そして魔法陣の製作者に悪態をつきながらも、急ぎ暗号の解読と新たな術式の置換作業に取り組む。

「助かったわレグス。これで動いたらご褒美にあとでいい子、いい子してあげるわ」

 軽口をたたけるほどの余裕を彼女は取り戻していた。

「ふざけた事を言ってないで、作業に集中しろ」

 レグスとセセリナのやり取りに、ファバ達も安堵する。

 絶望的な戦いを続ける彼らは期待しているのだ、セセリナの知識と力に。

 その期待に応える為にも、驚異的な速度で魔法陣の修復作業を進めていく精霊の少女。

 魔術師ギルドの者達が十人、二十人束になっても、彼女には敵いはしないだろう。

 それほどの修復速度だった。

「出来た!! 今度こそ完璧よ!!」

「急げセセリナ」

「わかってる!!」

 セセリナは修復を終えるなり間髪を容れず詠唱を開始する。

 もはや戦況はぎりぎりもぎりぎりであった。

 そして悪霊の群れとオークやリザードマン達の攻勢に、壁の民達の防衛線が完全に崩壊する寸前、魔法陣の術がようやく発動した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る