第347話
「どうして、どうしてよ!!」
己の理論は完璧だったはず。
間違いがないか何度も確認したのだ。
それなのに……、魔法陣が上手く動かない。
彼女にはわからなかった。
完璧に直したはずの魔法陣がどうして動かないのかが、どこが間違っているか皆目見当がつかなかったのだ。
これではたとえ時間がどれほどあろうと、手の施しようがない。
時間がないのなら、なおさらどうしようもない。
「駄目!! 失敗よ!!」
青き精霊の少女の絶望的な叫びの音が、寒々しい地下部屋に響いた。
「落ち着け、セセリナ。急ぎの作業だったせいで、どこかにミスがあるのだろう」
風に乗り届くレグスの言葉にも、彼女の焦りは募るばかりである。
「何度も確認したわよ!! だけど、わからない!! 理論上はこれで上手くいってるはずのよ!! なのに、動かないの!!」
「焦りゆえに見落とす事もある。一見簡単に見えるものほど、そういったミスは起こしやすい」
――簡単に見えるもの……。
レグスの助言によって、天啓を得るかのようなひらめきがセセリナに生まれる。
所々に散見された何の変哲もない簡単な術式。
あれを初めて目にした時、彼女は違和感を覚えていた。
他の部分はまるで魔術的知識を自慢するかのように、わざとらしいぐらい高度で複雑な術式が使われていたのに、どうして所々に非常に初歩的で簡素な術式が使われているのか……。
時間の猶予の無さもあってか、その時は違和感を振り払うようにして、修復作業を進めたのだが、もし、あれらが簡単な術式に見せかけた暗号式だったのなら、魔法陣がうまく動かなかった訳も理解出来る。
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