第346話
――こっちのは完全に消えちゃってる。それにあっちは自作の暗号文字かしら……。
多少擦れ消えかけた部分を修復するだけならセセリナにとって訳が無い事であった。
しかし、あまりに消失している部分が多い場合や完全自作の暗号文字を使った術式となると話は別である。
――これじゃあ自分で他の術式に置き換えるしかないわね。
周辺の術式を手がかりに推測し、新たな術式を刻み込んでいくしかない。
――ここはファーバナントの新式を使えばいけるはず……、こっちはあっちの連華式に作用してるわけだから……。
思考と確信。
それを繰り返し、次から次へと術式を刻み込んでいく。
時の流れを危うく忘れかけるほどに夢中で、セセリナは魔法陣を描き続けた。
そして……。
――出来た……。これでいけるはず……。
暴走を起こす事がないよう何度も出来上がった魔法陣の確認を終えてから、精霊は言った。
「ちょっと力技も使ったけど、修復完了よ。皆、まさかやられちゃってはいないでしょうね」
セセリナの問い掛けに地上で戦う仲間達が返答する。
「ああ、問題ない」
「なんでもいいから早くしてくれ!!」
「セセリナ急げ、私達以上に壁の民達が限界だ」
レグス、ファバ、カム、三人の声を聞き届けた後、彼女は魔法陣の中央へと移動した。
「それじゃ皆、いくわよ」
そして淡き青の手を添えるように魔法陣へ置くと、セセリナは詠唱を開始する。
彼女の美しき詠唱の旋律に、魔法陣が反応を強め、やがてどんどんとその力は強まり、文字や線形が輝かしき光をも放ち始める。
古き魔法陣が精霊の手によって甦ろうとしていた。
そして地上で戦う者達にも、地下の魔法陣の力が感じられるほどに高まった頃、突如としてそれは消え失せた。
「どうして!!」
焦るセセリナ。
「もう一度!!」
すぐに詠唱をやり直そうとする彼女だったが、今度は魔法陣がまるで無反応。
これが成功するかどうかに地上で戦う者達の生死がかかっているというのに、魔法陣は沈黙したままであった。
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