第344話
広い地下空間に描かれた巨大な魔法陣。
その中央に、青き精霊の少女は深刻な表情を浮かべ立っていた。
――さてと、どこから手をつけようかしらね……。
目の前の魔法陣を観察、分析していくセセリナ。
数千年と生き、大陸を流浪してきた精霊には、下手な魔術師連中よりもよほど優れた魔術的知識がある。
彼女に無理ならば、城で戦う他の者達の誰にもこの魔法陣を甦らせる事など出来はしまい。
――基本はミドナリアのルーン文字のようだけど、だけどこっちはオゼスのルーン文字ね。これはレナトリアのミゾス文字かしら……。それをロドン式と神雷理論を応用して繋げてるわけね。でも、そうなるとこっちは……、えぇと……。
一目見た時からわかっていた事だが、改めてよく見れば見るほど、この魔法陣に使われた術式の複雑さには驚かされる。
わざとらしいほどに高度な術式とその組み合わせの連続。
結界用という重要な防衛装置でありながら、機能しなくなってからも長年放置され続けた理由はまさにこの複雑さが原因だろう。
一介の人間の魔術師達が手に負えるような次元をはるかに凌駕していた。
――時代も地域も流派もばらばら。よくもまぁこんなものを一つの魔法陣として成立させたものね。どだい人間には無理な代物ね。
誰が造った魔法陣だろうが関係ない。
セセリナはこの複雑な巨大魔法陣を己が持つ知識を以って修復しなければならないのだ。
そうしなければ、自分達は戦いに敗れ、尊い仲間の命すらも失う事になる。
失敗は許されない。
――とにかく手がつけられそうな所からしていくしかないわね。
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