第317話

 殺しに殺し。

 やがて、煉撰隊に続き城内に入り込んだオークやリザードマン達を全滅させてしまうと、邪剣を振るう男はまだ殺し足りぬとばかりに城壁の際に向かい歩を進めだした。

 その後姿にトーリは直感する。

――まさかあの男、城壁から外へ飛び降りる気か!?

 城外には殺しても殺しても群がり続ける大量の魔物の大軍勢、魔物の海が存在している。

 その海へと邪剣使いは身を投げようとしていた。

 城壁の高さはかなりのものであり、ただの人間がそこから飛び降りて無事で済むはずがない。

 それ以前に、味方もいない敵陣の真っ只中に飛び降りて戦うなど正気の沙汰ではない。

 たとえ魔剣の力を得て人外の強さをほころうと、たった一人で城外から押し寄せる魔物の波を全て捌ききれるとは思えない。

 考えるよりも先に体が動いていた。

 老魔術師は急ぎ詠唱を行いながら地面に魔法陣を描いていく。

 その間にも、レグスはどんどんと歩みを進めていき、城壁の際へと迫る。

 そして彼が城壁の際に立ち、まさに飛び降りんとするその寸前、トーリは魔法陣を完成させ、術を発動させた。

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