第318話
魔法陣より影なる手が邪剣使いの体目掛けて伸びていく。
トーリのその魔法に対してレグスの反応が遅れたのは、その術に殺意がなかったから。
老魔術師が彼を救わんと思い、発動させた魔法であったからだろう。
影なる手はレグスの体を掴むと、彼を城壁上から内へと強引に引きずり落とす。まるで地面に叩きつけるように、無理矢理にだ。
その不意の激しい衝撃にレグスの意識が一瞬飛ぶ。
「邪剣使いの小僧よ、気は確かか? それとも剣の魔に呑まれてしもうたか」
禍々しき黒剣を手に握り締め仰向けに倒れる男に近付き、トーリがその顔を覗き込む。
息はしていたが瞳は闇に沈み、焦点が合っていない。意識が正常にない証拠だ。
短く詠唱し杖を軽くレグスの体へと当てるトーリ。
すると、杖を当てられた体が跳ねるようにして反応を示し彼の意識が覚醒した。
意識を取り戻したレグスは朧気な視界に映るトーリの姿を見て呟く。
「ガルドンモーラ……」
その言葉が何を意味するのか、この時はまだ老魔術師は気付かない。
ただ、どこかで聞いた覚えのある言葉の響きだと感じるだけである。
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