第316話
そんな老魔術師の心配をよそに、レグスは順調に魔物共を斬り殺し続ける。
邪剣を手に戦うその男の顔には笑みすら浮かんでいた。
――なんと笑うか、この状況で。
それは一時劣勢であった戦況を盛り返した安堵の笑みには見えない。
もっと残虐で恣意的な笑み。
黒き剣を手に戦う男は楽しんでいるのだ。
この戦いを……、違う。
彼にとってこれは狩りだ。
男の戦いは一方的に暴力を行使し、死を貪り喰らう底なしの獣の姿そのものであった。
寒気がした。
魔術と政治の世界に身を投じ、数多の恐ろしき残酷を目にしてきた老魔術師が男の戦いに震えたのである。
――まさに悪魔的よの……。
いったい何が悪魔的なのか。
それは男の戦いっぷりであり、魔剣の力であり、そして魔剣を生み出した人間の業がである。
されど、その悪魔的業を以って魔剣は生まれ、その剣の力を行使したからこそ、一度崩れかけた戦線を立て直せたのだ。
恐ろしくとも、それをことさら批難する事などトーリには出来なかった。
ただ単に戦いに有用な戦力となるからだけではない。
彼は自覚していたのである。
所詮、己もまたその悪魔的人間の業に生きてきた者である事を。
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