第303話

 枯れ森のエルフ達が精鋭部隊の投入を決意し、その準備をする間にも、魔物達の攻勢は緩まるどころか、さらに激しさを増す。

 攻城塔や投石機を利用しての早期の攻略には失敗したものの、魔物達にはなおも圧倒的な数の優位があるのだ。

 醜悪な豚面のオーク共が、城壁に次々と梯子を立て掛けのぼっていく。

 リザードマン達にいたっては梯子いらずで、するどい爪と吸着性のある手足を利用して直接城壁をよじのぼっていた。

 そしてその手助けをしようとゴブリン共が弓矢を飛ばし、ハーピー達が空から援護する。

 守る壁の民達は飛んでくる敵の矢や怪鳥達の攻撃にも怯む事無く果敢に体を張って、城の内に入れてなるものかと防衛してみせた。

 城外には大弓の矢の雨を降らせ、城壁上にのぼってくる者あれば大剣を振るい追い落とす。

 死力を尽くした防衛戦だった。

 攻め寄せる魔物共と戦っているのは壁の民だけではない。

 レグスも危険な最前線に身を投じ戦っていたし、カムは後方から特に厄介な個体を的確に射抜き殺していく。

 まだまだ戦いに不慣れなファバも最初こそは緊張を見せていたものの、今では機械弓を手に立派に戦えている。

 空では鷹のライセンが、城外ではレグスが召還した魔造犬も活躍していた。

 かつてバハーム砦で盗賊共を惨殺したあの異形の魔犬、ヒトツメのジヌードである。

 夜は魔物共がもっとも力を発揮する時間帯であるが、それは夜の時間に活動を限られるジヌードとて同じ事。

 縦横無尽に駆けまわる異形の魔犬に、魔物達は次々と狩られ殺されていくのであった。

 そうして守って、守って、守り続けた籠城する者達。

 鉄壁に見えたその守りであったが、ついにそこに穴が空く時がくる。

 わずかな隙をつき、城壁上に斬り込んできた者達がいたのだ。

 その者達の数はわずかに七人。

 されど、その誰もが強く、素早く、連携巧みであった。

 押し返そうとやってきた壁の民達も斬り伏せてしまう凄腕のエルフ達。

 そう、彼らこそ、シュドゥラが送り込んだ枯れ森のエルフの精鋭部隊『煉撰隊』である。

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