第299話
「十分って……」
カムの意図をセセリナはまだ理解出来ていなかった。
そんな精霊の少女の耳に指笛の音が聞こえてくる。
その音に反応したのだろう、夜空に鷹の鳴き声が響き渡った。
ライセンだ。
怪鳥達と戦う鷹の姿を眺めながら、ようやくセセリナはカムの考えている事を察する。
「ちょっとまさかっ、無茶よ!!」
「他に手があるのか?」
「投石機は敵陣の最奥部にあるのよ、そこまで突っ込ませる気!? たかが鷹の一匹に何が出来るっていうの!?」
「たかがとはひどい言い様だな。あの子は私が知るかぎりでもっとも強く勇敢な空の戦士だ。それにとびきり賢い。彼以外に相応しい者がこの状況でいるとも思えないが?」
鷹がハーピーの群れを相手にして戦っているというだけでも驚きであるのに、彼の女主人はさらに危険な任を与えようという。
確かにそれが出来るのは鷹のライセン以外にいようはずもないのだが……。
「だからって危険よ」
「既に危険の真っ只中だ。必ずあの子ならやりとげてくれるはずだ、セセリナ」
固い決意のこもった言葉だった。
今は力の出し惜しみをしていられる状況ではない。
誰もが死力を尽くさねば、待っているのは破滅なのだ。
だからこそ、カムは危険を承知でライセンに残った投石機を止めさせようと考えた。
当然それは愛鷹に対する信頼あってこその考えに他ならない。
「……わかったわ」
セセリナもそれを理解し、承諾する。
それだけでなく彼女は少しばかりの助力を申し出る。
「だけど少し待って。あの子に風の加護があるよう、術を使う時間をちょうだい」
「ああ、わかった。助かる」
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